ザ・グランドファーザー : おじいちゃん

the grandfather

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2004.12.01

_ [本][感想]ジョー・R・ランズデール/人にはススメられない仕事

本: 人にはススメられない仕事角川文庫 "踏みつけた馬糞の中に子馬を探すような"性格をした貧乏白人、ハップ・コリンズとその親友、"世界一頭の切れる黒んぼ"でゲイの黒人、レナード・パインが巻き起こす第四弾。今度は恋人ブレットの娘を売春宿から救うために、国境を越えてメキシコでバイカークランと一戦交える。身の丈サイズの義侠心と結びついたヴィジランティズム、真っ当すぎるほどに真っ当な個人主義を身に纏い、結局クソの山に頭から突っ込む報われない人達の物語。ドギツい3K(きつい・きたない・くさい)描写に塗れてはいても、シリーズに通底するモラリスティックな雰囲気が、むしろ硬骨な印象。租にして野だが卑ではないというか、主人公達の正義感からの行動を安易に肯定しないスタイル。毎回職を失って、散々な目にあって目的を達成しても、結局主人公達は報われなくて、彼らの回帰する日常の状況は物語の始まる前より更に悪化していたりする。そして、悪党にも憎めない一面があり、しかして悪党は悪党で、然るべき時に報いを受けるべし、と作中人物の口から語られる(恐らくは作家の)価値観に、ヤムチャ的存在は一度のファンブルで命を落とし、無垢なるアルマジロは改造銃の標的にされるところを、シリーズ中最も危険な男であるレナードによってその命を救われる。キンキーな道具立ての中に貫かれた正しさへの意思が気持ちいい。

_ [本][感想]ジョー・R・ランズデール/テキサスの懲りない面々

本: テキサスの懲りない面々角川文庫 ハップ&レナードシリーズの5作目。警備員として勤務する鶏肉工場で、相変わらずの報われない義侠心から、ジャンキーに襲われる娘を助けたハップ。たすけた娘は工場のオーナーの娘。10万ドルの小切手と一ヶ月の休暇、そして無上の感謝を受けたハップに、そうそう幸運が続くはずもないのだった。シリーズに登場して、なんとか各作品の結末まで生き残った一癖も二癖もある連中が再登場して、集大成の趣。主人公二人に降りかかる災難も今回はより一層ロクでもないことになっていて、周囲の人間に押し寄せる無慈悲で無遠慮な死の数々が、またも中年白人ハップを乗りかかった船から悩みの海に突き落とす。が、石の上にも3年。結局南極やっとハップもおいしいところを持っていき、彼の善性もついに報われて、シリーズにも一応の区切りがつく。ハップとレナードの末永い幸せを祈らずにはおれないけれど、続編を望む気持ちももちろんある。この幸せな状況。

2004.12.05

_ [映画][感想]Mr.インクレディブル

http://www.disney.co.jp/incredible/
期待以上。俺内アメリカのかなりの部分を占めるスーパーヒーロー要素について、麗しい愛情でもってかなり非の打ち所なく描けていた。『ウォッチメン』『ダークナイト・リターンズ』『マーヴルズ』『キングダム・カム』『ワイルド・カード』『パワーパフガールズ』etcを自明の物とした上での、『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バードからの渾身の返歌。以下、目についたところ。ネタは割れている。
  • ボブの車、守らんとする町並み、パー家やコスチューム・デザイナー、エドナのアトリエはミッドセンチュリー、いわゆる"古き善き"モッダーンなオールドフューチャー。戦車もM41ウォーカー・ブルドッグ風。対して、シンドローム側の基地とガジェットは、銀と青の寒色系でまとめられた当世のハリウッド・スタイルで、ボブの勤務する保険会社のオフィスは窮屈なキュービック・パーテーションに区切られて、PCで仕事をしている。息苦しい今日的な現実。この対比が、それぞれの年代が象徴するヒロイズムへの価値観の対立が作品のテーマの一端であることを示している。また、『アイアン・ジャイアント』では作中の年代を明示する小道具(スプートニク、F86セイバーetc)が頻出して絵作りの外の情報量を補っていたけれど、今回はこのモザイク的な美術が、逆に作中の年代をあやふやにしている。これはフル3D作品に度々感じる箱庭感、目に見えるオブジェクトの先に何もない、情報量そのものに陰面処理がかかった感覚とも通じるのだけど、これがこのピクサーユニバースのスタイル、あるいはインクレディブルらがフォーカスしていた都市のスタイルだったということかも。
  • インクレディブル氏の親友、周囲や体内の水分を冷却して氷を操るヒーロー、フロゾンの声を演じるのはサミュエル・L・"ミスター・グラス"・ジャクソン。泣かせるキャスティング。ふんだんに空気を含んだ、白濁した氷の表現がちょっと見慣れない。技術的な都合かもしれない。でも、警官を拳銃弾もろとも凍らせたところは透き通った氷だったな。
  • 長男ダッシュ。敵ザコのゴーグルが外れて目が合うと、攻撃の手を緩めてしまうところが秀逸。高速で蚊柱に突っ込む表現の嫌さは、多少モータリゼーションの進んだ社会では普遍性のある表現かもしれない。奇しくも上映前にやっていた『CARS』の特報でも同じ表現があったので印象に残った。インクレディブル氏との蜜月期の描写(投げたボールをとってくる)が終盤再現される辺りも。
  • ヒーローが公然と活躍していた背景を考えれば居てもおかしくないのだけれど、言及されている作品を寡聞にして知らない、コスチューム・デザイナー・エドナ。マント否定の下りは単体でも名シーンだけど、ちゃんと伏線として機能していて、オタ向けのくすぐりに終始しないのがすごい。服飾デザイナーのステレオタイプを嫌味になりすぎないバランスのキャラクター造型もいかす。声がブラッド・バード本人なのは本当なのかな。No Capes!
  • イラスティガールの豊満な腰周りのモデリングとミラージュさんの頬赤らめぶりがエロすぎる。イラスティガールは、砂浜に泳ぎ着いて、疲れきって体が伸びっぱなしになる描写も素敵。ヴァイオレットはパラレルワールド・ファイネスト・貞子というか。ちょっと描写があっさり目だった感がある。女子の内面描写に男子のそれ以上のボリュームを求める恋愛ゲー的条件反射で目が曇っているかもわからない。
  • 『君のためなら死ねる』をプレイしている影響は否定できないけれど、作中のアスレチック・シーケンスが単純なミニゲーム集に回収できる印象。イージーなFlash化が目に浮かぶ。
  • 髪の毛表現はさすがに頑張っていた感じ。髪の毛が長くて、演出上の意味も持たされているヴァイオレットよりは、アクション上よくなびかせるヘレンの方が目立っていた。ヴァイオレット級の長さの髪を綺麗に動かすのが難しかったという事情もあると思う。さすがに濡れた髪はゼラチンで固めた風になっていたけれども。しかし、この技術的な蓄積は次回作の『CARS』では生かしどころがなさそう。
  • 麗しのスーパーヴィラン・シンドロームの最後はもう1フォローあるとうれしかった。ミラージュさんがすぐインクレディブル氏に転んでしまう辺りも含めて、悪役の呼吸については日本的なスタンスを期待しすぎて違和感が残りがち。完結映画で3悪人的なアプローチも収まりが悪いというのはあるし、世界観のつなぎとしては最後にフックが用意されてるからきちんとしてはいるんだけども。
  • 最後まで作品の肯定するセンスを駄目押しするスタッフ・ロールが素晴らしくかっこいい。最後まできっちりあんこを詰めてこられて参る。

_ [本][感想]殊能将之/ハサミ男

本: ハサミ男講談社文庫 知人から薦められて。少女を殺害し、喉にハサミを突き立てるシリアル・キラー"ハサミ男"。ハサミ男が三人目のターゲットとして付け狙っていた少女は、自分の眼前で、自分ではない何者かによって、自分と同じ手口で殺害されていた。

物語は、ハサミ男たる"わたし"の視点と、ハサミ男と想定された殺人事件の犯人を追う刑事達の視点が交互に立ち現れて進行していく。"わたし"の語る、静謐で知性的な印象の文体と、毎週末様々な手段で自殺を試み、失敗した後に現れ出づる、正体おぼつかぬ"医師"と"わたし"の対話がいい。ずいずい読まされる。普段ミステリを全く読まないので、語るべき言葉を持たないのだけれど、後半、ガクンと世界の様相が変わる辺りには興奮を覚えた。殆ど完成しかかっていたジグソーパズルをバラバラにされて、全然違う絵を見せられたというか、パズルの完成形自体が騙し絵になっていたというか。作中の"知ってるつもり!?"の題材がジェイムズ・ティプトリー Jr.なのも、いかすくすぐりだと思ったらちゃんと意味があるな。唐突な感はあったけれど、伊藤典夫にまで言及しているから、完全にコアな層向けだと思ってた。やられた。

2004.12.06

_ [マンガ][感想]オノ・ナツメ/stecca #1-4

settantanoveorsi発行。買い逃していた#1が手に入ったので、2-4ともに読み返す。ままならない男達の物語。ザクザクとしたクリスプな描線。硬質で、ミルクのように美しく不透明な、我々とは異なる文化と心性をもったキャラクター達の穏やかならざる想念の表出を静謐な態度で綴る、小さなハードボイルド。ありきたりなウェットさを排して染み渡る、翻訳文学のような乾いた温もりを感じる、中々稀有なマンガ表現。同人作品は、人物の押し出しのさりげなさと、まさに海外ドラマ的に入り組んだ人間関係のおかげで、商業出版に比べると幾分読みづらい感がある。ほのぼのにも痛々しい方向にも容易に寄せていかない、作家のストイックで確かな足の運びが素敵だと思った。

2004.12.10

_ [本][感想]中島らも/アマニタ・パンセリナ

本: アマニタ・パンセリナ集英社文庫 知人から。著者のドラッグに対する学究の軌跡を辿りつつ、国内トリップ・カルチャーや著者の若かりし頃についての回顧録の趣をも見せるエッセイ集。とりあげるネタはメタンフェタミン、大麻、LSDからペヨーテ、ブロン、ガマの油にステロイドまで。
リテラシーの高い、きれいなジャンキーの与太話。"シャブ"の項での覚醒剤への著者の考えや、"大麻"の項の『効いてきた女』の話なんかとても頷けるところなんだけれど、どうも感想を持ちづらい。ジャンクをジャンクとして愛好する才覚に欠けるわりに、ジャンクを持ち上げて神聖視する事にも違和感を覚えて、結局適切な位置取りができないでいるというか、もどかしい印象。似たような感覚はいわゆるライトノベルに対しても受けたことがあったかもしれない。その作品や題材の立ち位置で読み方を揺るがせるというのは、結構不誠実な態度であるようにも思えて、自分の中での扱いに困りがちなのだった。

_ [マンガ][感想]山名沢湖/スミレステッチ,白のふわふわ,委員長お手をどうぞ

本: 委員長お手をどうぞ 1 (1)アクションコミックス本: 白のふわふわ―9 clouds of Yamana worldBeam comix本: スミレステッチ―7 stitchers of Yamana worldBeam comix買うのに大分迷ったのだけど、いや、おもしろかった。レーベルがビームコミックスだったので、ちょっと竹本泉『よみきりもの』を連想したりもした。『委員長お手をどうぞ』は結構地に足がついていてそうでもなかったのだけれど、『白のふわふわ』の、日常に対してとてもシームレスに無邪気な主観のファンタシーが混入してくる呼吸が新鮮。バリアフリーのセンスオブワンダーというか、一つの幻視に客観の肉付けをしたり筋立てで転がしたりしないで、未加工のまま生得のセンスでもって不自然なほど淡々と仕上げた感触にフェイキーだけど妙にリアリスティックなガーリーさを感じさせるところ。『スミレステッチ』の星菫女学院を舞台にした二本なんかはささやかなあざとさが逆に女の子ぽさの迫真性を出していて、大変結構な案配だったように思う。

2004.12.11

_ [ゲーム][感想]逆転裁判

ゲーム: 逆転裁判 BEST PRICE そろそろGBA資産を回収し始める頃合かと思って、DSに挿して遊んでいる。最近、PCのノベルゲームに相次いで挫折していたせいか、システムとシナリオがサクサクした高品質のゲームプレイに結実している様子がいい。確信を持ってつきつける「異議あり!」「くらえ!」が、状況のイニシアチブを取るカタルシスをイチイチ錯覚させてくれる。シナリオのコンシューマ的な普遍性のバランスも望ましい。ある種の高潔さ、は言い過ぎだけれど、易く閉塞していかない感じというか。ボソっと舞台が近未来(2016年)だったりするところが気に入り。

_ [マンガ][感想]こうの史代/夕凪の町 桜の国

本: 夕凪の街桜の国 100頁余りの掌編。自分の中の中短編信仰をより一層強固にする傑作。軽やかさと、高比重の鋭さの巧みな転調ぶりは、揺さぶられると共に、物語の主題を、自分の中で長いこと自覚されていなかった広島への認識にやけにしっくりと収めていった印象。
何か生臭いことだけど、昨今の『はだしのゲン』の受容のされ方を楽しみながらも、伝承媒体としては摩滅しかかっている感触を受けていて、この新たなフックの登場は、例えこの題材におけるスタージョンの法則の比率を多少好転させることにしかならないとしても、ぜひ歓迎されるべきところだと思った。いや、この作品が1955年から2004年に渡る物語である通り、事態は未だに済んでいないし、きっと終息しようのないことなのだろうけれど。

2004.12.13

_ [イベント][感想]World Hobby Festival 有明11

http://www.whf.co.jp/
ディーラー/アイテム/感想。

森川由綺 観月マナ
たわしを使った新しいイジメa.k.a卓球模型/森川由綺, 観月マナ/ホワルバにはたわらば程度の興味もないのだけれど、この二つの作品には、見本の完成度の高さもあってとても目を惹かれる。モチーフが通り一遍の消費の波濤に浚われても、なお減衰しないモチベーションの強さを想像させて……BGの2D絵との絡みを見ると、キャラクターとしての乳母桜的余生なのかもしれないけども。


CLUBピストルディスコ&楽園都市機甲兵団/BJPM外装2態/サベッジでトーテミックな外装がでていた。マテリアルに附随するイメージに固執しないで積極的にモチーフのバリエーションを押し広げていく姿勢は、ファーストパーティとして正しい方向性と思った。ゲームシステムの方はTCGぽくて、ウォーハンマー的な想像を透かされた印象。カードと立体物の絡みがあんまり楽しそうじゃないかな。


くらぶファンタスト/ライデン512/全高10cmくらいのライデン。フォースのVRは、これくらいのサイズが面構成の密度感がギッシリ見えて好ましい気がする。ハセガワテムジンを見ていないので、フォースの大きい立体物への印象も特にない中での、胡乱な印象。

鹿山さんと乳歯くん
R.GLATT-CC/鹿山ちゃんwith乳歯くん/パーツ・要素をもりもり乗せていく、魔女っ娘寄りの散漫なキャラクター造形が割と苦手なので、この、要素のミニマルに絞ったマスコットキャラに寄せたスタイルが気に入る。僕が、ちびすけマシーン辺りで認知したオリジナルキャラクターの文脈に回収されそうな好物だ。胴体の適度な眠たさを強調するようなパールと、髪の毛のスキっとした抜きのニュアンスの落差とかも。


キツテフ/あらしのよるに/ワンフェスにせよWHFにせよ、造型イベントのサークルカットは、髪媒体が多くを占めるイベントのそれと比べるとそれはそれはひどいものだ。ボールペンでの殴り書き、白紙提出、その他諸々の力の注がれなさに、脱力を通り越しておかしみすら感じる。同人誌と違ってカット一つの持つアピール具合の心許なさという事情があるにしても、あまりにも妙なコモンセンスにおいて成立している存在。そんな中で気にかかったカットを頼りに訪れたブースで、見事当を得た作品を見とめるというのは、いや存外気分のいい事。例えそれが展示のみだったとしても。

グリス・ボック シュタイン・ボック
ためえもん亭/グリス・ボック, シュタイン・ボック/フル可動ペーパークラフト。スケールは1/60。やはりVRとペーパークラフトの親和性たるや瞠目もので、特に3DCGならではの稚気の発揮しどころであるマーキングやパターン塗装については、3Dプロッタがいくら進歩したところで埋めきれない本質的な隔たりがあるように思う。グリス・ボックを買った。

_ [アニメ][イベント][感想]アニメスタイルイベント19

http://www.ntv.co.jp/ghibli/web-as/08_event_m.html
WHFを早めに切り上げて新宿の地下でアニメを見る。ゲストは和田高明、細田守、サムシング吉末、今石洋之、中澤一登、新井浩一とか。上映された作品の中では、森やすじ監督の『おおかみの七ひきのこやぎ』のカラコロとした画面。シナリオも森やすじ氏が手がけたそうで、おかあさん山羊の「今度家に近寄ったらどてっ腹に風穴開けるわよ!」という狼に対する恫喝にしびれる。おおかみのポテンシャルを使い切って、観る者をおおかみに感情移入させるほどの秀逸なドジッ子描写もいい。細田守絶賛でトリを飾った、『草之丞の話』もまた大変に素晴らしい作品。谷口ジローを彷彿とさせる抑制の効いた芝居(ほぼ一人で原画を手がけた新井浩一氏は枚数がなかったと謙遜していたけれども)をもって語られる、滋味溢れるいい話。話もちょっと谷口調。これが江國香織のデビュー作だというのに驚く。あと、『風人物語』のダイジェストを見たが、女性キャラの尻から太ももにかけての描き方が目が潰れるほどエロエロしいおかげで、その他の、風を視覚化した独特のビジュアルやフォークロアいプロットの印象が霞んでしまった。約8時間に渡る長丁場に加えて、会場に渦巻く瘴気とプアー過ぎる客席環境に精根尽き果てがちではあったけれど、アニメプロパーでなくとも非常に楽しかった。ロフトプラスワンの、演台と客席の物理的心情的近さが生み出すボンクラ顕現率の高さや、一日店長のシステム、あの淀んだ雰囲気には何度足を運んでも慣れないし、積極的に苦手でいたいのだけど、ンム。

2004.12.15

_ [本][感想]グレッグ・ベア/タンジェント

本: タンジェントハヤカワ文庫SF
やっぱりおもしろかった。総じて、パキっと閃いたイカス情景/状況を描くために、ややヌルめの理屈を捻りあげて帳尻を合わせんとしているような印象を受けたのだけど、その、緩く右脳側に振れた楽しさのバランス感覚がやけに肌に合う。『飛散』に登場する蓋然性分裂装置とか、その傾向が強い。標的を、同じ物性を持った同質量の、秩序と生存能力を持った並行世界からの断片によって再構成するこのノンリーサル・ウェポンの攻撃を受けた主人公とその乗艦は、同じ様に分裂・再構成された別の地球文明の宇宙船がグチャグチャに混ざった巨大な船の一部として目覚める。めくるめくディテールを贅沢かつ執拗に描写したあとに、状況のスケールを一気に押し広げる様子がいい。時折挿入される幼女の心性についての仄めかしに、一緒に読んでいた山名沢湖を連想するふしもあった。『白い馬に乗った子供』の、神話的な色彩を帯びつつあるファンダメンタリズムとの暗闘の様と、『スリープサイド・ストーリー』のヴィクトリアンでゴシックな雰囲気も気に入る。お話もとてもキャッチー。読んでる最中に冬目景辺りでマンガになってる様子が思い浮かんだ。

2004.12.18

_ [イベント][感想]東京ジオサイトプロジェクト3 地底現場応援団

http://www.geo-site.jp/


虎ノ門交差点の小さな入り口から入り、急な階段を降りると、いきなり基地ぽい空間が広がる。地上とのディテールの多寡が過剰で、逆に非現実感を煽られる。ライティングの調子が地下なのに普通のプレハブが建っているところとか、一昔前のゲームのプリレンダCGの背景みたい。



エレベータで立抗を降りる。このエレベータがまたビーガシャリグウィーゴンゴンゴンゴンゴヒューンガシャリビーというか、刷り込まれた鉱山系のイメージを裏切らない見事なもの。立抗のスケール感がわかりづらいかもしれない。階段と比較してほしい。天蓋に開いた搬入口の四隅からぶら下がっている蛍光色のチェーンはおそらくクリアランス確認用で、コロニーからホワイトベースが出港する時のガイドレーザーを連想させてかっこいい。ホワイトバランスをしくじって色合いが変だ。好きな色だけども。


立抗の底に貼られた、各セクションの作業者が顔写真入りで示された名簿。そのまま構内に向かう。


坑内。コンクリートの壁面は、通常のセグメントで覆われたもの。積まれた七つのセグメントが一つのリングを構成する。一度施工したらもう解体できない。咬合面の黒い帯は水分を吸って膨張するゴムで、これでシーリングの役割を果たす。茶色いテクスチャの壁面は、鋼製のセグメントで覆われている。後々立抗の出来る予定がある箇所はこの施工になっている。



トラムだ!名前はピカチュウ2号。立抗から搬入されたセグメントをトンネルの先端まで運ぶ四両編成で、8人乗りの客車もついている。運転席にはマスコンとブレーキも確認できる。と、いうような事を、辻々にいる現場の作業者の人が解説してくれるのだけれど、その職能への誇りを感じる語り口と、ほころぶ顔のうれしそうなことときたら、企画の煽り補正を差っぴいても強力に琴線に触れてきて、たまらない。


天井を通っている太いパイプは送気管。足場は広く、金網でできていて、しかも底が確認できない。『サイレント・ヒル』を思い出す気もする。トンネルのそこここに、地上の建物の位置が示されている。官庁街ということもあって、フィジカルな存在として意識したことのなかったものを建物として、更には実物を確認することのない地下から意識することになる錯誤感。



こんな感じで、トンネルが掘進される工程をパネルで説明してある。解説はもちろんそれぞれのセクションの作業者。中には作業中の様子がパネルのネタになっている人もいて、写真をお願いすると照れる様子が燃える。立抗の搬入口からクレーンで地底10mまで下されたセグメントは、そこからクレーンのコントロールを地下の作業者に移してトラムに搭載され、トンネルの先端部、掘削面の手前でエレクタというアクチュエータのお化けに掴まれて、熟練した作業者の修正を受けながら、ロール・ピッチ・ヨーを駆使して施工されるのだった。


掘削した土は、基地から送泥管で供給される泥水に混じって、排泥管で地上に戻される。トンネルを走るパイプのうち、一番下の緑色が排泥管、その上の灰色が送泥管。一番上の二つはトンネル壁面と土面の隙間を埋めるためのセメントミルクを送り出すパイプ。2液硬化式なので二本要るのだという。表情が魅力的なヒゲのお方の担当は排泥の成分分析。地層というのは非常にデリケートで、少し掘り進んだだけで構成が変わる上に、土圧管理においては排泥の少しの差も効いてくるそうで、努々おろそかにできないセクションなのだという。外郭放水路とは全然刺激される部分が違うところだ。


トンネル先端に近づく。これは、シールドマシンが掘り進むにつれて送排泥管を延長し、延長する際に泥水が漏れ出さないよう制御する装置。



トンネル先端部。赤く見えているのがセグメントを施工するエレクタ。脇のダイダロスとプロメテウスみたいな機械類もシールドマシンの一部で、電源や油圧の供給を行っている。そのまま掘り進むにつれて一緒に前進するのだと教えられて、左右ともレールに乗っているのを見つける。エレクタがボス敵に見えてきた。


トラムで運ばれてきたセグメントは、ここで専用のアタッチメントをつけたクレーンに吊り上げられて、ベルトコンベアでエレクタがつかめる位置まで移動していくのだった。



エレクタ。やたらにFPSの高い滑らかな動きが多関節キャラに見えて、ますますボス敵の感を強くする。トレジャー製のSTGに出てきそうだ。動きにあわせて油圧系統のパイプと継ぎ手がパキン、カチンと音を立ててその身を震わせる様子がかっこいい。


後ろを振り返って。送気感の出口は先端部が出口なので、再奥部には風が吹き荒れて、新鮮な空気が供給されている。不思議な感じ。施工されたリングには立抗から昇順で通番が振られている。665Rが、現在の到達点。


往路を戻って、立抗を途中まで昇る。既に接続成った麻布共同溝の中で、共同溝の利用法やシールド工法についての解説が行われていた。突然予期しない単語が現れて面食らう。すごいユビキタスだ。


トンネル先端から排泥されてきた泥水を、振動で土と水分に分離する施設。こうして分離されていい具合の粘度に戻った水分は、送泥管から送り出されて再利用される。分離した土も建築材料になるのだそうだ。



立抗の途中に作業者達のメッセージが展示されていた。「地底の生活25年、地上の生活もう戻れない」とか、微かに湛えられた陰の気配にやられる。プロジェクトX/メタルカラーの時代的なテンプレートに回収された上で、なお圧倒的なポテンシャルの語り部たる作業者達の存在、あけすけに稼動中の建築現場の臨場感、重機欲の満たされ方なんかのおかげで、前回の外郭放水路も今回の催しも、代理店じみた仕掛けへの屈託はあまり変わるところがないのだけれど、今回のがより素晴らしかった。外郭放水路の圧倒的なスケールと、ジオサイトの圧倒的なディテールを比べるなんて、仕方のないことではあるけれど、外郭放水路はイベンターの推し方がピンとこないのがちょっと弱いかもしれないとは思った。

_ [ゲーム][音楽][とるにたらない]YMCK/FAMILY MUSIC

http://www.ymck.net/
今朝、何気なく点けていたワイドショーのNintendo DSを紹介するVTRで、BGMにこのCDの内容が使われており、小さく驚いた。


2004.12.19

_ [マンガ][感想]大庭賢哉/トモネン

amazon 小田扉の帯に釣られて買ったらとても具合がよくって。これは好物だ。雰囲気は、一話しか見てない『灰羽連盟』と被るところがあるようにも感じたけれど、話を形作る情動はより軽やかで、世界観の軸のズラし方のさりげなさ・素っ気無さ、世界観を語りたがってしまわない節操の持ち方が、とても品のいいかんじ。後半の『Go Girl』『リーザの左手』『よーこちゃん。』の子供心の描き方とか素晴らしいな。ジブリの子ぽい、風通しのよさそうな水彩の画面もすごく気持ちいい。『トモネン』の大人の介在しないぶりと、それによって喚起される読者の庇護者気分はちょっと、『苺ましまろ』を読んだ時の感触を思い出しもする。ここに、読者が自分を投影できる成人男性をしっかり登場させると『よつばと』になったりするのか。

名前も作品も全然意識していなかったのだけれど、『リーザの左手』だけは読んだ覚えがあるな、と思ったら四季賞を獲っていた。この人もオノ・ナツメもそうだけど、最近コミティアルな作品に目が触れる機会が多くなってきた。一遍コミティアに行って鉱脈を試掘してみる必要があるようだ。

2004.12.20

_ [本][感想]森見登美彦/太陽の塔

本: 太陽の塔
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
何故なら、私が間違っているはずがないからだ。
こんな書き出しで始まる、身も蓋もない言い方をすると、ドロップアウトした京大五回生が、袖にされた彼女に対して前後不覚でストーキング行為に及んだり、モテない友人とクリスマスに対して怨嗟の念を挙げたりする話、なのだけど。主人公を始めとして、登場人物が皆とても愛らしく描かれていて、いやらしいところがまるでない。他者への感情が尊敬と恐怖で占められているような、心地よい青さというか。主人公も、いくらルサンチマンに塗れた風を装っても、ちょっと気を逸らすとリリカルな妄想に頭が浮き上がってしまうし、同じ彼女を付け狙うストーカーの後輩には塩を送って、後で自分で歯噛みしたりする、ボンクラかくあれというような男の子ぶりで、もう仕方のない好ましさ。垂れ流された脳汁が、彼岸の淵をたゆたって大海に至るような達者な文体に、京都の聞き慣れない地名が重なったりもして、意識をゆるゆる蕩かすような、大変結構なファンタジーぶり。こういう、自分に身の覚えのある有様をこうも麗しく描かれてしまうのには、どうしても弱らざるをえない。あと、文体からは指輪世界を連想する感じもあって、自分の、わかりやすく頭のいい文章に対する免疫の無さは、98年頃に大学生のテキストサイト文脈を貪っていた頃と全然変わるところがないのだなとも思った。

2004.12.24

_ [アニメ][映画][感想]ベルヴィル・ランデブー

http://www.klockworx.com/belleville/
冒頭から、こないだ観たディズニーの初期短編集をフラッシュバックさせる蠱惑的なフルアニメーションぶり。画面がモノトーンからウォームトーンに移り、予期された祖母と孫と子犬の生活。一息入るのも束の間、成長した孫の姿と、繰り返し描かれる犬と電車の強迫的な関わり様に度肝を抜かれる。残飯なのか栄養食なのか区別のつかないアスリートの食事。老婆の、関節一つ分ほども高さの違う靴。異常発育で前肢のないカエル、戦後間もないフランスが舞台であることを想起させるポテトマッシャー、何気なく描かれる物者がいちいちグロテスクで、明け透けな寓意を含んでいるように見せながら、決して簡単な印象を掴ませない様子が、常に不安をと緊張を強いる。民族性に染み透ったような、最早理解の及ばないいけずさというか、大陸性ののっぺりとした巨岩のような、眉一つ動かさずにおぞましいものを連ねていく、したたかなテンションを前に、取り付く島のないこのいたたまれない感じ。老婆が三つ子に冷蔵庫の使用を止められた時の恐ろしさときたら、登場人物がまるで感情の起伏を見せないせいもあって、心臓を冷たい手で撫でられた様にショッキング。外宇宙の異文明に放り込まれたような悪夢感。唯一感情をむき出しにするのが犬だけれど、食欲に支配されている時以外は電車とのパラノイアックな関係性に耽溺している。
口の運び、手指の芝居、肉体の所作に見惚れる。特に三つ子の動きは音響も合間って素晴らしい。静物画みたいな構図の取り方も素敵。舞台が、アメリカ/ニューヨークへの愛憎半ばしたどぎついカリカチュアが氾濫するベルヴィルに移るにつれて、煽られた感情もなんとか鈍磨して、3Dエフェクトの出来栄えに一抹の残念感も感じられる程度に落ち着きながら、この体験はエンディング・テーマの歌詞に着地する。人に薦めるものではないし、クロックワークスの苦心の宣伝は少なからず不幸な体験を生みもしそうだけれども。や、とても満足した。

2004.12.25

_ [マンガ][感想]山口貴由/悪鬼御用ガラン

amzn初期作品に共通する、グロ/ユーモア/乱暴な価値観のメルティングポットぶりはこの作品でも健在。そこが愉快なところでもあって、『覚悟のススメ』で発見した時、読み方に戸惑う人の多かった理由でもあるように思うのだけれど、その、自分の中にあるものを取捨することなく作品の中に全部込めてしまう(ふうに見える)過剰な誠実さみたいなものは、山口貴由の好ましい美質の一つであると感じる。青さの見え隠れするこの作品をはっしと引き受ける単行本のあとがきも、この印象を強くさせるところ。
で、初期作品なのでやっぱりキツ目に修正がかかっている。是非については言を持たないけれど、童女カニバライズ、童女の後頭部を十手で一閃などシリアルペド方面への傾倒を疑われる描写についてはむべなるかな。

読み方を戸惑う事について。どシリアスなシーケンス(主人公が悪党に妹を文字通り食べられ、自らも犯されて、その無様を父親に叱責されている)の最中に脇役から出るセリフが
ご子息は初めてのA感覚で放心状態です!暴力はお止め下さい!
これだ。途方にくれるのも判る。

_ [マンガ][感想]らいむみんと/かめとあそぶ

amzn ペドフィリア生存圏拡大の為の闘争の、一つの戦果と捉えるのが果たして幾許かの正しさすら含んだものなのかどうか。手段を選ぶことを忘れなければ達成できない目的を設定してしまった人達の、最早喜劇的に転倒した有り様を過剰な絵力で切り取っていく様子は素晴らしくて、特に『僕はおっぱい小学生も好きなのだが?』のラストなどはたまらないものがある。幼女に対する視線の業の深さ、具体的には作中の絵日記の具合なんかは、(対象は異なるけれど)『プロペラ天国』に登場する中学生の書き文字に一歩譲るにせよ、感嘆せざるをえないところで。
幼稚園児への挿入表現がある時点でリテラシーをかなり意識的に上げないと読めないのだけれど、それ以外の嗜虐性向を徹底的に排してあることと、画力の非凡さで、マンガ読みに向けたギリギリの一般性は残しているかもしれない、とは思った。

2004.12.27

_ [マンガ][感想]ウエダハジメ/Qコちゃん THE地球侵略少女

本: QコちゃんTHE地球侵略少女 2 (2)マガジンZコミックス本: QコちゃんTHE地球侵略少女 1 (1)マガジンZコミックス2巻を買ってきたので、1巻を読み返してから。牡蠣殻を不用意に素手で掴んで傷だらけになったような読み味。登場する大人も子供も、描かれ方が実に怜悧で酷薄。他者を嘲る、バカにする、下に見る、恫喝する。穏やかならざる感情が、子供である事に甘えたような衒いのなさと、フッと湧き出たそれをノータイムで放つが故の鋭さと軽さでもって飛び交って、読み進むことは地雷原の中を這い進む事にも似る。老人達の操る、声色まで伝わるようなレアーな言動(こういう風に喋りのモードを変える人っているな)と、主人公の子供=畜生感の強いスキンシップの様子、ゴスロリちゃんのパートナーの兄貴と宇宙人の幼体の情動には生臭さといやらしい体温を感じるけれど、どちらかといえばそこから透ける作者のサバけぶりが印象づけられる。主人公のお母さんが周囲の大人に嘲笑されるところとかもそんなイメージでとらえてしまい、より正視しづらい。
作品中、愛情を表出させる数少ない人達(主人公のお母さんとヒロイン)の扱いのぞんざいさが気になる。全体的に作者と作品の距離を感じるというか、作品に込められた作者の意思が気取りづらい。これは意図的な節制の結果とも、余裕の無さの顕れとも思える。

後半は、半ば打ち切り、かどうかは判らないけれど、誰かにとって不本意であったろう始末が伺われる。こういう、切羽詰って風呂敷をたたみにかかる状況ってあまり嫌いではなくって、リソースの配分によってはトップをねらえ!の最終話的な味わいを出す余地があるんじゃないかと思っているのだけど、この作品ではコマ間の慣性モーメントが高まりすぎて(=コマ間を読ませる量が多すぎて)スピード感につながっていかず、あまり気持ちよくない。内容として、特定の作品がどうというのじゃなくても、なんだかオマージュ色が強まったというか、作者の食べてきた物が工夫なく排泄されている感じを受けてしまって、醒めがちになる。息切れというのか。とはいえ、話の居心地の悪さもバクバクした迷いのない絵もかなり気に入りではあって、今後もコンスタントに商業誌に描きつづけてくれれば重畳と思う。

2004.12.30

_ [ゲーム][感想]洞窟物語

http://hp.vector.co.jp/authors/VA022293/
ワンシッティングで一気に越す。おもしろかった。ややアスレチックよりのオールドスクールな2Dアクションアドベンチャーで、8ビット級スケール。とにかく隙を見せないウェルメイドさ。それは、アクションゲームに対して人類の夜明けが始まる程度の素養しか持ち合わせない人間でもクリアできて、コンプリートあるいはトゥルーエンドを目指せば際限なく辛くなる難易度。それは、小学生を背伸びさせてくれた『サンサーラ・ナーガ』『メタルマックス』辺りの、限られた表現力の中、タイルの向こう、ひらがな文章の隙間から染み出てくる濃密でキンキーな世界の形や、『クインティ』の言い知れない不気味さを思い起こさせる世界観の提示の仕方。妙なキャラ造型に耳慣れた名前がついていたりする転倒感や、限られたピースからプレイヤーが想像する世界の認識を二転三転させる秀逸なハンドリングとか。あるいは、言い方を変えれば作り手の感性が濃密に嗅ぎ取れるような、殆どのゲームが個人の創作物だった頃の雰囲気。そんな懐古趣味と、現在進行形で飽食の度を深め続ける消費スケールのギャップを密やかに埋めるべく、控え目かつ高度に振るわれる科学力。
そんな風にカキッとまとまった圧倒的な小品感に深い敬意と感謝を表しつつ、パッケージ化されてツラリとお金が払えればなお素晴らしいな、と考えたりもして。

_ [EQUIPMENT][感想]MIHARAYASUHIRO/ブーツ,NIKE/Dunk Hi,TSUBO/サイドゴアブーツ

今月はやたらと靴を買っていた。3足。ここ何ヶ月か、消費サイクルがそういった傾斜生産的な傾向を示している覚えはあって、マフラーを2本一緒にとか、スーツを2着誂えそうになるといった調子になっている。あまり好ましからざる傾向に感ぜられ、是正していきたい。買い物に対して黒目がぐるんと裏返って正気を失ったようになるのは確かにカタルシスではあるけれど、それが常態化するのは中庸をもって善しとする家計の危機でもあり、4人の攻略対象の内から進んで物欲を娶って正妻とした身からすれば、窘められるべき事ではないかとも思う。ン。
一番奥がミハラヤスヒロのブーツ。足首とアッパーソールの革以外が分厚いフェルト地でできている。甲がやたら高いのでシフトアップがとてもやりづらい。仕方がないので内側の親指の付け根辺りにシフトペダルを引っ掛けていると、フェルトがどんどん削れていく。辛い。
中央はナイキのスニーカー。半ば衣装として買う。作品中ではエアフォースIともエアジョーダンIとも取れる描き方がされていたけれど、陰気な色合いが設定されているのはダンクだけだった。この次にこういう靴を買うのはいつになるだろうか。できればそんな機会はこないでほしいと今の自分は思っているようだ。つま先を折ると指の付け根に革が食い込んで痛い。皮が柔らかくなるまで履き込むつもりはないみたい。
手前は聞いた事のないメーカーのブーツ。リーボックの元デザイナーが興したところだという。革がソールまで回り込んでいて、何か妙な形。ソール周りはスニーカーの文法で作られている感じがする。サイズに比して全長が短くて、纏足感があるというのか、色も合間って木靴っぽい雰囲気。足首の縁が切り立っていて、短い靴下で履いていたら派手に靴ずれた。どうも、今回のリプレイスでは足元に春が訪れる事はなさそうに思えてきた。すくたれ者の脳は、体に対して耐えてほしいと頭を垂れるばかりだ。