2004.11.23
_ [映画][アニメ][感想]ハウルの動く城
ネタを割っている。思えば2年くらい前、細田守降板の話を聞いた頃、初めて見たティーザーは、悪魔と契約を交わし、身体を非可逆的に兵器と為して戦う、異能者で最低野郎たる魔法使い共の戦記物の気配を濃厚に押し出していて、遂にエターナル思春期宮崎監督のコンプレックスの片輪であるところの軍オタ性向が存分に発揮された映画ができるのだと、静かに興奮したものだった。なにしろ、"動く城"だ。火力の規模と機動可能な特質からは、艦隊戦を、フェティッシュな短砲身を備えた大小の砲塔と、フィールドを陸上とするからには戦車戦を、そしてまず第一義に城なのであるからして、攻城戦と内部での白兵戦をも期待する。好物をよく詰め込んだものだと関心した記憶がある。多様な戦闘作法を縦横無尽に演繹して、美味しいところをつまんだ射精物の戦闘シーンの合間に『雑想ノート』『泥まみれの虎』で言及されたような、城が稼動するための気の遠くなるような兵站がネットリと描きこまれるのだろうと、城以外のビジュアルが殆ど露出しなかった所為もあって、勝手な妄想が脳裏を掠めた事もあった。それが、次のトレイラー、その次、となるにつれて、当初のハードコアな印象は薄まり、糸井重里の胸焼けしそうなキャッチコピーが加わるに至って、トレイラーのカラーはいわゆる世間でイメージされる抹香くさいアットホームな宮崎作品に摩り替わっていったように思う。公開も延期されて、製作も混乱の最中にあったのじゃないかと想像する。果たして出来上がった作品もその印象を引きずったものになったようだった。『千と千尋の神隠し』も、随所に過去の作品を想起させるようなビジュアルがあったけれど、『ハウルの動く城』では更にその傾向を強く感じる。オーニソプターと飛行艇、コブ人間の粘体表現、落ち込んだハウルの溶けゆく様、輝いて一点を指し示す青い輝石、ファンタジーとしての飛距離の無さを感じるイタリアモチーフの町並み。ハウルのねぐらの美術は『耳をすませば』『千と千尋』に連なるか。エンディングの飛ぶ城はラピュタだけど、これはそれまでに登場する飛行物体が人機含めて全て羽ばたくものだったのに対して、エンディングの城にはプロペラが使われていることが、ちょっと異質に感じる。『ラピュタ』では羽ばたき飛行機(オーニソプター)はフラップターだけで、ラピュタもゴリアテもタイガーモスも、みんなプロペラだ。この逆転の意味が気になる。たぶんアポフェニア(無関係の事柄に繋がりを見いだす知覚作用)だ。かように、映像としてはちょっと見覚えがありすぎるわりに、メインビジュアルたる城の外見が、ほとんど物語に寄与していないのもいっそう画面のインパクトを寂しいものにしているように思う。荒地の魔女が宮殿の階段を上るシーケンスと、半分黒鳥化したハウルの羽毛のみっしり感のグロテスクさはすごくよかったのだけど。
お話は、説明不足の諸要素がとっちらかったまま、尺が足りないので宮崎っぽいシーケンスを挿入してハッピーエンド、という感じでどうしようもなく消化不良。まず戦時下の大状況を描いているのに、物語の主要なドリブン要素は師団相当系天才魔法使いハウルの周囲10mくらいの個人的な問題で、そのセカイ系要素の動静を大状況へ敷衍していかず、全然話がダイナミックに転がり始めないのがもどかしい。自分でカルシファーを外へ出して城を崩壊させておきながら、直後に自らの御髪を賭してカルシファーに城を再構築させるソフィーの分裂傾向の行動原理は不安にさせられたり。ソフィーが唐突に過去へさかのぼってハウルとカルシファーの契約の内容を知ったのもまあいいとして、カルシファー自身はその内容を忘れていたのだろうか。それは契約してんじゃなくて使役されてるだけなんじゃないかとか。ソフィーにかけられた呪いの仕組みも結局よくわからなかった。荒地の魔女がしぼんだ後も、解けかかったり戻ったり、エピローグでは完全に解けていたけれど、どんなきっかけだったかさっぱりだ。物語のドリブン要素として機能してたとは言い難い気がする。
ハウルは巨鳥に変化するために、カルシファーとは別の(ところどころで"魔王"として言及されている?)悪魔と契約しているのだと思うのだけれど、その代償は何で支払われたのか。カルシファーとのやり取りにおいて、心と心臓が同じ物として扱われ、ラストで完全に巨鳥と化したハウルが心=心臓を取り戻すことによって蘇る=命を得る事から、巨鳥との契約に心=命=心臓を賭したわけではない。後は魂くらいしか思いつかないけれど、ハウル世界の神話魔法体系にあっては心と魂は別のもの?あるいは、変容する身体そのものを代償としている?低級の魔法使いが体を変容させたまま戻れないという描写があるし、それだと得心が行きやすいかもしれない。
カブ頭が辛い。ヒロインのキス→呪いが解ける→隣国の王子でした→レッツ停戦ナウ。それを覗き見て半メタな態度で一人ごちた後、摂政を読んで戦争を納めにかかるサリマン先生。都市部への空襲が毎夜のようにあって国家総動員令が出てそうな、今までの泥沼の全面戦争感溢れる描写に対してこの肩透かしスッポヌケ。乱暴な風呂敷のたたみ方。悪は必ず滅ぼされるべし、とは思わないにしても、明らかなカタルシスの落としどころのサリマン先生が悪い奴ほどよく眠る状態になっているのに困る。続き物の原作の一巻目を続編の予定なんかない映画にするんだから、それなりの咀嚼の仕方があるだろうに。
_ [映画][感想]オールドボーイ
http://www.oldboy-movie.jp/ネタを割っている。攻守が目まぐるしく入れ替わる重層的な復讐の念。
- 韓国映画を見慣れていないせいか、異なる社会的コンセンサスから演繹される諸所の描写が印象に残る。主人公の、ライバルへの鬼気迫る謙り方なんかは、儒教的モラル粒子の濃さに対する了解があって初めて成立するものだろうと思う。近親相姦がタブーであることに変わりはないけれど、それに対する当事者の御し方には彼我で差があるのだ。きっと身体的、あるいは精神的な生死を分かつほどの差が。
- ライバルの、主人公とヒロインへの複雑な感情の持ち様がいい。ヒロインの処遇について主人公をなじる辺りで、二人はお互いに復讐の対象でありながら、ヒロインへの庇護者的恋愛感情を共有していて、更に主人公がライバルの目的を知るに至り、何らかのシンパシーを感じているように見えるところとか。
- 救いとは何か。この復讐譚における救いとは、各人が永年抱き続けた思いに対して、それぞれの落とし前をつけることだ。ライバルは復讐を遂げることで、主人公はその復讐心を挫かれて、ヒロインへのいびつで壮烈な情愛に変容させて回収する。結果の良し悪しは観る物の解釈によるだろうけれども、全ての思いに片がつく。物語の熱的死こそが救いだ。
- 長回しの格闘シーン。腹の出た中年が皮膚感覚でゾワリとくる得物、玄翁、ハサミ、鋭利に折れたハブラシなんかを駆ってキレのいいワンショットワンキル系のアクションを見せている。やっぱりQTが好きそう。
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