2004.11.04
_ [映像][感想]MS IGLOO
http://www.msigloo.net/昨日見てきた。以下ネタを割っている。連想したのは戦場まんがシリーズ、小林源文、『世界の駄っ作機』とか。監督が0083の人なんだけど、0083の青臭い気色悪さはなくって、MS戦記、小林版、センチネルなんかに時々のシーンが引きずられた過去を踏まえた上で、すれっからしのおじさん達が、アブラッ気の抜けた品のいいカリカチュアをやっておられるな、という印象。考証好きにはちょっと突っ込みどころの多そうな大らかな描写や、ちょっとストレートすぎるくらいのWW2のパスティーシュも含めて、先に挙げた先達の善いとこを、うまく宇宙世紀に落とし込めている。30分の尺の中で、決して過剰に語りすぎない抑制の効いた意匠と演出。絶妙に食い足らなさの残る腹八分目感というか、映像の情報量自体はかなり多いんだけど、それをひけらかさない分別。こういう、正しいオトナコドモな趣味性を持った作品が、きちんと傍流としてのバランス感覚をもってフォローされているのには、ガンダムという作品周辺の成熟を感じた。
_ #1 大蛇はルウムに消えた
第一話目なのに題材は、ムカデ砲。最近だとV3号よりもフセインのスーパーガンのが有名かもしれない。キャッチーさゼロ。振るい落としとしてはちょっとハードコアすぎる。多分、#1 #2同時公開を見越してのチョイスだとは思うんだけど、それでもつかみのエピソードの主役メカが全然動かない大砲ってのは、一般性の放棄を高らかに歌い上げてると思った。そして、主役メカが動かない分、サラミスやらザクIIやらが異常な機動性で動きまくる。ファーストをイーアルカンフーだとしたら、イグルーはスト2ターボくらい。ルウム戦役に登場する艦艇の数も銀英伝級に多い。オールドスクールな作品テーマとのギャップに面喰らった。MSの高機動性の表現としては、3DCGの特質を生かしてて面白いと思うのだけど。
_ #2 遠吠えは落日に染まった
今度はSタンク vs ブランデンブルグ大隊。モビルタンクヒルドルブがもうすげえいかす。
ふん、来たな。戦争を教えてやる。このセリフからしてもうやられ気味。他の登場人物は普通のヘッドセットなのに、ヒルドルブの乗員だけ喉頭マイクだし、履帯を切られ、上面から撃たれ、戦車の弱点をイチイチ責めさせて、それを次々に覆していく戦闘シーンの演出も萌える。HIGH-MACSの別解といえるかもしれない。チョロQみたいなヒルドルブの動きは、自分の中の、小林源文よりも宮崎駿寄りな戦車観が軋む描写なんだけど、でもたまんなくかっこいい。軌道上からの補給物資投下シーンは、重力に惹かれてる分、艦艇が派手にエンジンを吹かしてる描写がよかった。リリースされた物資が意外なほど加速して降下していく様子と合わさって素敵。
_ #3 軌道上に幻影は疾る
『宇宙の駄っ作機』+『衝撃降下90度』+オーロラ かな。ヅダの煮え切らないデザインも、駄っ作機として見るといい感じ。やっと出てきたMSなのに、作中でも全然カタルシスを得られるような活躍をしないのがかっこよすぎる。あとは、ボールの憎たらしさ。シャークマウスなんかペイントして、HLVで軌道上に打ち上げられてまともに動けないMS-06Jを次々と屠っていくその姿に感動する。
_ ガンダムミュージアム
併設されているガンダムミュージアムにも行ってきた。この施設は、U.C.0100年に開館した、架空の博物館、『モビルスーツミュージアム』の体裁をとった展示なのだけど、RX-78の脇腹がリニアモーターで伸縮する板バネで構成されてるとか、コアファイターの排気を全身で制御して出力を増すとか、股関節がG.I.ジョースタイルに変わっているとか、とにかく初見の話ばかり。見てる最中はよくわからなかったのだけど、あとからこれは、一年戦争(0079)から20年経って、20年前の軍事機密に載せられたノイズまでも再現してるんだって事に思い至って、感心させられた。
2004.11.05
_ [COMIC][感想]マイク・ミニョーラ/ヘルボーイ:妖蛆召喚
本: ヘルボーイ:妖蛆召喚JIVE AMERICAN COMICSシリーズ第一部完。面白かった。ラスプーチンもヘカテも正義の宇宙人も、みんなヘルボーイが大好きで、ギャルゲーの主人公状態。男前でプリティな、ヘルボーイの魅力的な人格の描かれ方こそがやっぱりこのヒーローの肝となるファンタジーだと思う。それを、手前の容姿に悩む、色気づいた厭世的なクソガキにしてしまった映画版はやっぱり弱い。話としては、今までのエピソードの伏線を上手く消化してスッと得心がいく感じ。ホムンクルスのロジャーの優遇ぶりはうれしいところだけど、ヘルボーイってホント人間と非人間の物語的な耐久力の差がありすぎると思った。ロジャー登場の時はあんなにコロコロ事切れてたのに。ナチ子さんはちょっと気弱で、ロブスター・ジョンソンは正しく正気と狂気の境目を歩く怖い人だしで、今回は陽性のキャラがいない。その分寂寥感が強調されているようで、この雰囲気は好みだ。瓶詰め頭のフォン・クレンプトも、今回はやたら賢しいし。そんな中で、やっぱり最後に出てきて女の子になだめられているラスプーチンがおかしみを提供している。妖精王や地獄の御歴々が登場しなかったのは気になるけど、ミニョーラ本人の手による続刊に無理やり期待を持つ材料としたい。
2004.11.06
_ [映画][感想]恋の門
http://koinomon.com/友人いうところの"コジャレサブカル"の権化のような映画。じょいまっくすから市川染五郎まで、ギチギチに詰め込まれたオタク的フッテージの奔流が、松尾スズキのウェルメイドな演出と脚本によって客席全体に注ぎ込まれる様を目の当たりにして、ナチュラルボーン・ストロングスタイルのオタクではなく、他者と異なる為の手管としてオタク性を選択し、自らの消費行動にアイデンティティを仮託している紛い者は、アンビバレントな感情を抱く事を余儀なくされる。その苦さは、ヴィレッジバンガードの書棚を眺めた時に感じるのと同じもので、自分がマーケティングという釈迦の掌に捉えられるような、POSレジの1キーに類型化されるような、そんな感覚。自分がありふれたものであることを他者によって突きつけられ、そのことで簡単に揺らぐ自らの薄弱な自我を自覚してしまうことへの忌々しさ。駆り立てられた犬。パワーエサの存在しないレベルを蹂躙するパックマン。
_ [EQUIPMENT]mintdesigns 05S/S
http://www.mint-designs.com/ミントデザインズから来年の春夏物の案内が届いていたので、行ってきた。プリントでは、マルチカラーのストライプにクローバーをあしらったものや、グリッド柄の一部をマルチカラーで塗りつぶしたもの、エルマーと竜ぽいドラゴンのシルエットなどが目につく。服の仕立てではプリーツシャツや、プリーツの向きをセルごとに変えて、大きな編み目のように見せたワンピースがいい。今期からは靴も作るようで、シンプルなパンプスが何足か置いてあった。相変わらずそびやかで、気品と稚気の同居した素敵なブランドだと思う。仕方ないことではあるけれど、メンズの展開は控えめで色使いも地味なので、中々対価を払えないのが残念だ。
_ [イベント][感想]明和電機/ナンセンス・マシーンズ展
http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2004/NONSENCEMACHINES/行ってきた。明和電機はずいぶん前の箱根の森美術館での展示以降、あまり気にしていなかったのだけれど、今回は今までの活動の集大成的な内容で、かなり満足がいった。製品の自動演奏も頻繁にあるし、社長のポエミー性向が強く出た新作『エーデルワイス』は、社長手ずから製品をよくデモっていた。パチモクやリズムマシーン『音源』も、自分で演奏できるようになっていて、コンセプトの一つでもある生音の迫力を存分に味わえる。芸人根性は明和電機の特徴だと思うのだけど、その発露の一側面であるところのライブパフォーマンスも、パリで行われたライブの模様が常に上映されている。全体的に明和電機のエッセンスを余すことなく伝えようとする好ましい意図を感じた。長いこと(12/26まで)開催しているし、プレイバリューも高い。ファンでなくとも楽しめると思う。
_ ワンピース制服の素敵さ
http://www.ymmn.co.jp/maywa/intro.htm
明和電機の女性用制服には、ナッパ服とワンピースの2種類がある。そのうちのワンピースがとてもかわいらしいのだけれど、ここで買えるようだ。素晴らしい。買おう。誰かに着せよう。
2004.11.09
_ [本][感想]ウィリアム・ギブスン/パターン・レコグニション
本: パターン・レコグニション 現実がギブスンに追いついたのか、これまでのギブスン作品によって変容した現実がギブスン先生のつま先にキスをしたのか判らないけれど、とにかく2003年を舞台にした現代小説。この作品をギブスン作品たらしめているのは、ブランドのロゴやマスコットキャラクターに見ただけで強烈なアレルギー反応を起こす体質の主人公とかナチスの強制収容所内で考案された手榴弾サイズの手回し計算機なんかの、突飛なまでに広範な興味の対象と、作品中の大半を占める実在要素を、実はギブスンの空想の産物ではないかと思わせるほどに、自分の内に刷り込まれた考現学的執拗さと詩情に彩られた文体の記憶。架空であれ現実であれ同じ濃厚さをもって描写され、現実を異化し非現実に血肉を通わせるギブスン味。サイバーパンク三部作、スプロール三部作、今作と、現実と作中で描かれる世界の時間が近づくにつれ、作中世界に対するギブスンの視点が優しく、楽天的になっていく印象を受けた。それは20年間のギブスン本人の心境の変化でもあるだろうし、イマジネーションの距離感にかかったバイアスの顕現でもあるのだろうと思う。本作は真っ当なハッピーエンドを迎えるし、ほとんどの登場人物にもエピローグが用意される。この、エピソードに対する決着のつけ方にも、ギブスンの成熟を感じた。_ [映画][感想]snatch
DVD: スナッチsnatch 凝ったプロット、スタイリッシュな映像、イカス俳優陣、息つくことを許さない痙攣的なテンポ。虚無的なまでに端整過ぎて、何も引っかかるところがない、風化したかっこよさ。自分の中でこの手の、ビートニクというか、ちょっと斜に構えたブリティッシュ・ノワールへの耐性が劇的に低くなっている事に後ろ向きに少々驚く。現実感を喪失したまま、高速で撒き散らされる死と破壊、チェリーパイと区別のつかない血染めの喜劇。微かにはしゃいだ感じで提示される無自覚な死の軽さに、バーホーベンやジョン・カーペンターのそれとは異なる居心地の悪さを感じる。2004.11.11
_ [本][感想]佐藤亜紀/バルタザールの遍歴
本: バルタザールの遍歴文春文庫 一つの体に二つの魂を持つウィーンの没落貴族、メルヒオールとバルタザールが往く、酒と薔薇の20世紀初頭。陰気で惚れっぽく、すぐ落ち込んで酒に逃げ、肉体を共有する片割れと惚れた相手以外には徹底的に無気力にして冷淡、生まれついてのボンクラ、デカダンスの体現者。失恋しては酒に溺れて、悲嘆にも暮れ飽きると悪ふざけ。自業自得と周囲の悪意が、彼らをウィーン・パリ・チュニジアへと追い落とす。高等遊民を気取っても、肝心なところであふれ出る間抜けさにおかしみを感じるし、失恋を兄弟二人してウジウジ悔やむ嫌気性のナイーブさと、近くにいすぎるが故の、空気のような兄弟愛には、萌え萌えしげなニュアンスを気取ることもできようと思う。人間離れした人間くささ。WW1前からナチスの台頭辺りまでのヨーロッパの雰囲気・風俗を織り込んだ構成、文体も手練れ感が漂うけれど、この格調高さにマンガ脳はブルズアイ射竦められて、ブコウスキーを読んだ時に少し感じた、しっくりこない読後感。エンターテインメントとカタルシスに浸かった読書野には辛いジョブを与えてしまったかも。2004.11.14
_ [イベント][感想]Herptile Breeder's Market 2004
http://www4.ocn.ne.jp/~hbm/繁殖爬虫類オンリーイベントに行ってきた。卓数は38、規模としては今まで行ったイベントの中では一番小さい。地下の狭い会場、過剰な人口密度、生体のために灯される大量の白熱灯。極彩色の亀、蛇、蜥蜴、蛙、カメレオン。そして食餌たるコオロギ、芋虫、利便のために羽を退化させたショウジョウバエ。巨大なゴキブリ。樹脂容器に入れられて山積みにされたそれら生体が居並ぶ光景は、デパートの地下食料品売り場の悪夢的なパロディにも見える。異常な密度で生命が凝集しているのに、何の臭いもしないデオドラント感。未知の趣味分野に集う人々の未知の共通点と非共通点。ペット業界のうさん臭さ、ガラの悪さに加えて、先鋭化の末に隔月刊専門誌一つでカバーされるスケールの趣味世界の息苦しさ、一画面で俯瞰できてしまう感じ。その印象と、会場の非現実の先に逆説的に感じる世の中の広大さ。
_ [ゲーム][感想]BURNOUT3 TAKEDOWN
中文版。このゲームにあって、プレイヤーは否定されない。ドリフト、ジャンプ、追走、ニアミス、どんな些細な事も星三つで大仰に称揚される。クラッシュを起こしてもまるで素晴らしいトリックを決めたかのごとく事細かに採点され、(Into Pickup + Soft Landing + 40Ft Skid + 2.9s Air + BackFlip……ただトラックにカマ掘っただけなのに)、ポイントが加算される。大量に用意された評価観点(敵車をクラッシュさせた回数、クラッシュの内容、クラッシュさせた車両の被害額、etc)が、どんな行いにも御褒美を提供する。アンロックニューカー!アンロックニューイベント!アンロックニューアワーズ…… 何をやっても誉めそやし、飴を絶やさずモチベーションを維持させる。プレイヤーに五体倒地をかましたソリューション。褒めて伸ばすゆとり教育。あなた方みんな世界一。この2004年の嘘つき鏡は、車を自機とするゲームでまともに越したタイトルが『ヴィジランテ8』しかないゲームフールをも心地よくゲーム脳に誘う。海外の甘すぎるお菓子みたいな、なりふりかまわないサービス精神の発露に当てられて正体を無くしながら、ふと思う。自分にとってのシューターやレースゲームとは、超えられない壁、プレイの鳥羽口にすら立てない、結晶化した硬派なゲーミングの象徴ではなかっただろうか、それゆえに憧れもするし、遊ばないのに購買していたのだ。当世欧米流のユーザーフレンドリーファイアが、ゲームフールのゲーム幻想を変容させていく。2004.11.19
_ [本][感想]舞城王太郎/みんな元気。
本: みんな元気。 冷えて過剰な暴力、異様な背景、比して無感覚に続く思索。時間・空間を無遠慮に飛びまわって続く、大体においてロクでもない大小のイベントの果てに、主人公はもしかしたら普遍性ある真理の一葉かもしれないような事柄について、"気づき"の感覚とともに思い当たって、自らの進路に少し修正を加える。短編集であり、それぞれの話に直接的な関連はないのだけれど、通底するテーマ・トーンは一貫していて、むしろ連作ぽい印象を受けた。あるいはこのスタイルが舞城王太郎の短編のおけるスタイルなのかもしれない。『熊の場所』は読んでいないのであまり強くは感じえないけども。独特の擬音が妙に腑に落ちる。聴覚に触覚が混じって、体全体で解釈しているというか。俺のとは異なるけれど、精度に信頼をおけるくらいに共感する他者の認識。この感覚が物語に敷衍されて、けったいなピースを連ねて描かれる各編にも、さして彼我の距離を広く感じない。身の丈にあったアンリアル。この安心感と、結末に示される真っ当すぎるほどの真っ当さ、いくらかは身に覚えのある普遍性は、そのままファンタジーの弱さ、飛ばなさでもあって、読んだあとの腹にたまる。ウォームで、ウェットで、閉塞感。臭い立つ舞城王太郎の価値観と一緒に押入れで寝起きさせられているみたい。『好き好き大好き超愛してる。』を読んだのは9月の初めだったけれど、まだ間隔が詰まりがちといえる。節度を持って読んでいかないと、本と読者にとって不幸な出会いになりそうだ。
_ [マンガ][感想]小原慎司/ぼくはおとうと
よかった。ひりひりする10代の焦燥感、10代の限りある想像力で規定される凡俗への、静かで無慈悲な視線、描き慣れないの緊張感のある描線が生み出すソリッドで陰のある画面と、両親との死別、社会的な義務からの解放、その他のわずらわしさからの退却が齎す、すっとぼけてやわらかい、有体にいえばダメな価値観が、一つの作品、あるいは一つの登場人物の中でまじりあって、いい中庸感。グラグラフラフラしている危うい主人公を、周囲の手厚い世界観が包み込んで、全体として非常に安定している様、小原慎司のこの秀でたバランス感覚はやっぱり好きだ。今描いてる『二十面相の娘』は、どうにも燃え尽き感が漂っていて読むと悲しい。金を払いたい気持ちだけで購読してしまっている。
_ コナミ社とロボゲー
メモ。ファントムクラッシュの続編(S.L.A.I : http://www.konami.jp/slai/)に続いて、リモートコントロールダンディの続編(http://www.konamistudio.com/new/rc/)もコナミ社のディストリビューションになるぽい。アヌビスからこっち、ロボゲーに対する地歩を築くのに積極的なのか。続編を出すには微妙な、インディペンデント系のロボゲーを拾い上げる事には敬意を払いたいけども、一般性の持たせ方があまりスマートでないように思う。
2004.11.21
_ [イベント][感想]首都圏外郭放水路 地底文化フォーラム
http://www.g-cans.jp/機会に恵まれた。

主ポンプ。出力10500kwのガスタービンエンジンの駆動を手前のギアボックスで減速して、直径3.8mのポンプインペラに伝える。超巨大なタミヤ基本工作セット。ギアボックスの周囲に張り巡らされた赤い提灯は、火災時に二酸化炭素を噴射して鎮火する設備。周囲に人がいれば当然昏倒する。
<ギアボックスとタービンパッケージの真上には天窓が嵌っている。メンテの時に直接吊り上げるためかと想像するけれど、この手の機械が自然光に照らされている様子も新鮮だ。
分厚い吸音壁。屋内に固定された発動機の騒音は耳を聾するくらいでは済まないだろうと思う。それでも、主ポンプ稼動時には頻繁に人の出入りがあるみたいだ。

エンターザメイズ。日比谷立坑(http://www.geo-site.jp/hibiya/hibiya.html)の時も思った事として、地上の出入り口は素っ気無いほど、地下空間とのギャップが大きいほどいい。芝生の只中にポツンと開いたワームホール。抜けるような青空が、なにやら宇宙 日本 世田谷。

調圧水槽。息を呑む閉空間。この後、三脚を忘れてピンぼけの海となった。

麗しの立抗。降り注ぐ自然光の様子は、馴染みのありすぎる非現実。それが現出しているがゆえに感じる違和感。
地下のパルテノン神殿とはまっことよく言ったもので、視点によっていくらも表情を変える、段差と支柱の幻惑。祭壇ぽい。


常に表情を変える照明演出。空間の広大さや、連続する支柱の醸す眩暈感をスポイルしてしまっていたかもしれない。いつ柱の陰から河森正治デザインが顔を出すんだろう、あるいは炭団、もしかしたら柱の間を飛び回るガリィ。点光源で照明された広大な空間には、『GUNDAM FIX』を想起するところもある。合成映えしそうな画面というか。

深淵へ続くかもしれない取水口。開いていたり閉まっていたり。また自然光にやられている。このミニマルな構造の中で感じるのは、FPSのレベルデザインに自分が立っている錯誤した全能感。スポーツ系FPSの、クリック級の反射速度と指先程度の慣性モーメントで動けるんじゃないかという錯覚。フォーラムでも言及されていたことだけれども、人間存在を一願だにしない、非人間的なスケールと機能を持った構造物に、まるで人家の入り込んだアリの状況で居合わせると、自分もまた非人間的な視点を獲得したようでたのしい。
フォーラムは、ゲストのキャラ立ちがよかった。東方洋雄氏、内山英明氏のスタンピードぶりを不確定因子として排除しない山名清隆氏のハンドリングは優れた手際で、宮尾教授のウェルメイドな話術も具合がいい。庵野秀明氏はいつも通り基本姿勢の表明者という感じ。そのほかの素人プレゼンテーションは、地下都市研究会が白眉。快速化学のさわむら氏によるスーパーカミオカンデ見学のプレゼンはツボを押さえ殺しにかかってきていて、来年夏の予定を確定させるのに十分な破壊力。高度計と水平器が標準装備とか、かっこよすぎる。その他のプレゼンは、プロジェクトが広く参加者を募って種を撒く段階であることや、プロジェクトX的、あるいはメタルカラー的にエンジニアリングを前面に押し立てたアプローチに手垢がついていることを勘案した上でも、適当なにぎやかしの域を出ていないもので、ホイチョイックなイベント演出と合わせて、残念な出来。

帰途。施設が高台にあることもあって、空の広さと周りの何も無さが強調されて、ちょっと細田守ぽいような郊外の風景。それを一皮剥いた下に、メガゾーンというかエイリアンというかなガチムチの80年代SFアンダーグラウンドスケープが存在してる状況も含めて、相当に比類なき妄想触媒だったように思う。
2004.11.23
_ [映画][アニメ][感想]ハウルの動く城
ネタを割っている。思えば2年くらい前、細田守降板の話を聞いた頃、初めて見たティーザーは、悪魔と契約を交わし、身体を非可逆的に兵器と為して戦う、異能者で最低野郎たる魔法使い共の戦記物の気配を濃厚に押し出していて、遂にエターナル思春期宮崎監督のコンプレックスの片輪であるところの軍オタ性向が存分に発揮された映画ができるのだと、静かに興奮したものだった。なにしろ、"動く城"だ。火力の規模と機動可能な特質からは、艦隊戦を、フェティッシュな短砲身を備えた大小の砲塔と、フィールドを陸上とするからには戦車戦を、そしてまず第一義に城なのであるからして、攻城戦と内部での白兵戦をも期待する。好物をよく詰め込んだものだと関心した記憶がある。多様な戦闘作法を縦横無尽に演繹して、美味しいところをつまんだ射精物の戦闘シーンの合間に『雑想ノート』『泥まみれの虎』で言及されたような、城が稼動するための気の遠くなるような兵站がネットリと描きこまれるのだろうと、城以外のビジュアルが殆ど露出しなかった所為もあって、勝手な妄想が脳裏を掠めた事もあった。それが、次のトレイラー、その次、となるにつれて、当初のハードコアな印象は薄まり、糸井重里の胸焼けしそうなキャッチコピーが加わるに至って、トレイラーのカラーはいわゆる世間でイメージされる抹香くさいアットホームな宮崎作品に摩り替わっていったように思う。公開も延期されて、製作も混乱の最中にあったのじゃないかと想像する。果たして出来上がった作品もその印象を引きずったものになったようだった。『千と千尋の神隠し』も、随所に過去の作品を想起させるようなビジュアルがあったけれど、『ハウルの動く城』では更にその傾向を強く感じる。オーニソプターと飛行艇、コブ人間の粘体表現、落ち込んだハウルの溶けゆく様、輝いて一点を指し示す青い輝石、ファンタジーとしての飛距離の無さを感じるイタリアモチーフの町並み。ハウルのねぐらの美術は『耳をすませば』『千と千尋』に連なるか。エンディングの飛ぶ城はラピュタだけど、これはそれまでに登場する飛行物体が人機含めて全て羽ばたくものだったのに対して、エンディングの城にはプロペラが使われていることが、ちょっと異質に感じる。『ラピュタ』では羽ばたき飛行機(オーニソプター)はフラップターだけで、ラピュタもゴリアテもタイガーモスも、みんなプロペラだ。この逆転の意味が気になる。たぶんアポフェニア(無関係の事柄に繋がりを見いだす知覚作用)だ。かように、映像としてはちょっと見覚えがありすぎるわりに、メインビジュアルたる城の外見が、ほとんど物語に寄与していないのもいっそう画面のインパクトを寂しいものにしているように思う。荒地の魔女が宮殿の階段を上るシーケンスと、半分黒鳥化したハウルの羽毛のみっしり感のグロテスクさはすごくよかったのだけど。
お話は、説明不足の諸要素がとっちらかったまま、尺が足りないので宮崎っぽいシーケンスを挿入してハッピーエンド、という感じでどうしようもなく消化不良。まず戦時下の大状況を描いているのに、物語の主要なドリブン要素は師団相当系天才魔法使いハウルの周囲10mくらいの個人的な問題で、そのセカイ系要素の動静を大状況へ敷衍していかず、全然話がダイナミックに転がり始めないのがもどかしい。自分でカルシファーを外へ出して城を崩壊させておきながら、直後に自らの御髪を賭してカルシファーに城を再構築させるソフィーの分裂傾向の行動原理は不安にさせられたり。ソフィーが唐突に過去へさかのぼってハウルとカルシファーの契約の内容を知ったのもまあいいとして、カルシファー自身はその内容を忘れていたのだろうか。それは契約してんじゃなくて使役されてるだけなんじゃないかとか。ソフィーにかけられた呪いの仕組みも結局よくわからなかった。荒地の魔女がしぼんだ後も、解けかかったり戻ったり、エピローグでは完全に解けていたけれど、どんなきっかけだったかさっぱりだ。物語のドリブン要素として機能してたとは言い難い気がする。
ハウルは巨鳥に変化するために、カルシファーとは別の(ところどころで"魔王"として言及されている?)悪魔と契約しているのだと思うのだけれど、その代償は何で支払われたのか。カルシファーとのやり取りにおいて、心と心臓が同じ物として扱われ、ラストで完全に巨鳥と化したハウルが心=心臓を取り戻すことによって蘇る=命を得る事から、巨鳥との契約に心=命=心臓を賭したわけではない。後は魂くらいしか思いつかないけれど、ハウル世界の神話魔法体系にあっては心と魂は別のもの?あるいは、変容する身体そのものを代償としている?低級の魔法使いが体を変容させたまま戻れないという描写があるし、それだと得心が行きやすいかもしれない。
カブ頭が辛い。ヒロインのキス→呪いが解ける→隣国の王子でした→レッツ停戦ナウ。それを覗き見て半メタな態度で一人ごちた後、摂政を読んで戦争を納めにかかるサリマン先生。都市部への空襲が毎夜のようにあって国家総動員令が出てそうな、今までの泥沼の全面戦争感溢れる描写に対してこの肩透かしスッポヌケ。乱暴な風呂敷のたたみ方。悪は必ず滅ぼされるべし、とは思わないにしても、明らかなカタルシスの落としどころのサリマン先生が悪い奴ほどよく眠る状態になっているのに困る。続き物の原作の一巻目を続編の予定なんかない映画にするんだから、それなりの咀嚼の仕方があるだろうに。
_ [映画][感想]オールドボーイ
http://www.oldboy-movie.jp/ネタを割っている。攻守が目まぐるしく入れ替わる重層的な復讐の念。
- 韓国映画を見慣れていないせいか、異なる社会的コンセンサスから演繹される諸所の描写が印象に残る。主人公の、ライバルへの鬼気迫る謙り方なんかは、儒教的モラル粒子の濃さに対する了解があって初めて成立するものだろうと思う。近親相姦がタブーであることに変わりはないけれど、それに対する当事者の御し方には彼我で差があるのだ。きっと身体的、あるいは精神的な生死を分かつほどの差が。
- ライバルの、主人公とヒロインへの複雑な感情の持ち様がいい。ヒロインの処遇について主人公をなじる辺りで、二人はお互いに復讐の対象でありながら、ヒロインへの庇護者的恋愛感情を共有していて、更に主人公がライバルの目的を知るに至り、何らかのシンパシーを感じているように見えるところとか。
- 救いとは何か。この復讐譚における救いとは、各人が永年抱き続けた思いに対して、それぞれの落とし前をつけることだ。ライバルは復讐を遂げることで、主人公はその復讐心を挫かれて、ヒロインへのいびつで壮烈な情愛に変容させて回収する。結果の良し悪しは観る物の解釈によるだろうけれども、全ての思いに片がつく。物語の熱的死こそが救いだ。
- 長回しの格闘シーン。腹の出た中年が皮膚感覚でゾワリとくる得物、玄翁、ハサミ、鋭利に折れたハブラシなんかを駆ってキレのいいワンショットワンキル系のアクションを見せている。やっぱりQTが好きそう。
2004.11.25
_ [マンガ][感想]三宅乱丈/大漁!まちこ船
本: 大漁!まちこ船モーニングワイドコミックスまちこは身長143cmの小柄な女の子である。まちこの生業は"マグロの餌"である。まちこは今日も中村船長の操る小型マグロ漁船、『大漁丸』に乗り、海に出る。針を咥えて、マグロに呑まれるために。
どちらかといえば『北極警備隊』よりの、陽性の三宅乱丈ギャグ。 中村船長の私生活や脱サラ漁師小川辺り、ギャグとしての正気を保っている部分も多い。にしても、目に付くのは毎回マグロの腹で消化されかかったメッシーなまちこ(毎回衣装が変わる)が見開きで描かれ、一度などはテグスが体に絡まり緊縛に足を踏み入れるといった、同人誌『赤い牙』や『王様ランチ』などでも見られたフェティシズムへの醒めてねじけた視線。それが、皮膚感覚に響くグロテスクな筆力とあいまって、大変おぞけを誘うものになっている。登場人物もすぐ瞳孔の開いた狂気の表情をするし、どれほどギャグに振っても、相変わらずどこかしらに心胆寒からしめる部分を混ぜてくる印象。油断がならない。
_ [映画][感想]ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
DVD: ナイトメアー・ビフォア・クリスマスNightmare Before Christmas ンンム。よかった。コマ撮りアニメや絵作りは言うに及ばず、ミュージカル部分もいいし、ストーリーも正しく日陰者フォーカスなバートン節だ。逆に言うとミュージカル部分以外のテンポがちょっと気になったりもしたけれど、まあそれくらい。でも、物足りない。ひねくれ方が何か健全だ。『バットマン』がゴルディアスの結び目だとすると『ナイトメアー〜』は綺麗な組紐というかな。その素直なハッピーエンドを受容しづらいのは、この手の話の結末に"おもろうて、やがて悲しき……"的な味を求める自分の嗜好か。ディズニー臭への反発もあるだろうし、長い事氾濫するグッズ類を眺め続ける内に、自分の中で作り上げて、知らずと消費していたオレ『ナイトメアー〜』像から一歩も踏み出さないような、模範的ティム・バートンスタンダードな作品であったことも、もしかしたら影響しているかもしれない。自分の天邪鬼性を呪うとともに、観る時期を逸した感を強くした感じ。2004.11.27
_ [映画][感想]SAW
http://sawmovie.jp/目覚めたら老朽化したバスルーム。足首には鋼鉄の鎖。対角線上にもう一人の男。間には自殺死体……。このノコギリは何に使うのか冒頭、二人の男が囚われた密室は不確定性の海にたゆたう小箱である。伏線を撒き散らしながら、男の回想によって、密室の外部状況は詳らかにされ、密室は天と地を得、昼と夜を得、意思とルールを与えられる。二人の対話によって徐々にピースは組み合わさっていき、観客は見覚えのある形をとり始めた物語に安堵と微かな退屈を覚える。ガチャついた外部の描写(工夫のないアクション、摩滅した映像表現、ベッタリと貼り付けられた劇伴)なんかも退屈を加速させる。その中でも、アジア系刑事を演じてたケン・リョンはかっこよかったんだけど。
終盤、それまでちりばめられた伏線が、観客の没入した思考と歩調を合わせてピシカシグッグッと回収されていく様が痛快。このテンポにほだされて、結末までしっかり畳まれる。面白かった。ただ、この手のホラー、あるいはスリラー的な事物の摂取量が極端に少ないせいか、裁ち切って取り付く島のない結末に対して多少の反駁を感じるところもあって、それは通り一辺の物語形式に囚われている自分を自覚させられることでもあるな、とも思う。

