2004.10.01
_ [マンガ][感想]藤岡建機/メダロット・ナビ
本: メダロット・ナビコミックボンボン 2001年にコミックボンボンで連載されていた、同名ゲームのコミカライズ、なんだけど。見づらいCGのエフェクトとか、行間コマ間を通り越してページ間を読むことを要求されるネームとか、同人誌ぽい甘ったれた作りが好き好き大嫌い、でも好き。メダロット・フィックスというか。プロットは二つのエピソードが交互に表れるようにできていて、一つは『星の王子様』からの引用を交えて語られる、リリカルな一夏のボーイミーツロボットもの。ネクタイ+メガネ+おかっぱの主人公がエロかわいくて、ロボットとの蜜月のあまやかな描写がとっても好ましい。こういうのがボーイズラブなら、俺、きっとボーイズラブ読めるよ。もう一つは、人間になるために"天国の門"と呼ばれる軌道エレベータを目指す、主人のいないメダロットが主人公の話。二つのエピソードは進むにつれて絡み合い、話は人間と、心を持ち、武器を携えるロボット、メダロットの関係性に及んでいく。
※議論作成にあたり メダロット公式HPに寄せられた読者の意見をさせていただきました。この辺り、素敵。ちょっと上田大王的な雰囲気もあるかもしれない。あれほどクールじゃなくて、大分湿度は高いのだけど。エピソードの構造がメダロットの伝統的な意匠(メダロットのゲームは常に二つのバージョンが一緒に発売される。)を踏まえているところも、セルフ・パロディとして望ましい態度だと思う。幼年誌でここまで読者層おいてけぼりの作品を連載した蛮勇にはちょっと複雑な感情を抱かなくもないけれど、でもそれって、21世紀の小学生をクソみくびった心根でもあって、連中に対しての敬意に欠けているよな。この作品をリアルタイムで読んだ2001年当時の小学生の内、何人かでもが道を踏み外した(あるいは更に踏み固めた)であろう事実の素晴らしさを思い浮かべた方が、いくらか気分が晴れるのでそう思うことにした。
2004.10.02
_ [マンガ][感想]山田三助/若さでムンムン
本: 若さでムンムンOhta comics確かにゲイ漫画ではあるのだけど、ゲイ向け漫画ではない、いや、ゲイに向けられていないわけじゃないからゲイエクスプロイテーション漫画ではない、のか。男子高校生の、未発達であるが故に奔放な性意識が、一時(一時かどうかは作品中では明示されないのだけど)ゲイ側に倒れる様を描いている。絵がとっても達者で、濡れ場は田亀源五郎系の壮絶なリアリスティックさがあるけれど、変にホモずれした価値観が持ち込まれていなくて読みやすい。夏の、あらゆるものが弛緩していくような雰囲気が執拗に描写されて、異様な状況も素直に受け取れてしまう。なんだろう、エロ漫画のフィールドで、ルサンチマンに逃げない気分のいい青春ものをやるってのは、『奈々子さん的な日常』が近いか。高校の授業内容が花輪和一だったりするくすぐりのセンスも含めて、なんだ得難い勃ち位置。
個人的なエロ漫画のリアリティの尺度として、チンコの描写を気にするのだけど、この作品ではサイズ、形ともにデフォルメを排したリアルなチンコ描写が展開されていて、新鮮に移った。これはチンコマンコではなくチンコアナルで状況を構成しないといけないゲイ向けエロ漫画の文脈なのかもしれない。あと、女の子が二人出てきて、これがいい。エロのメインディッシュとしての役割から解き放たれて、気楽に動かされる彼女らは、なんだか楽しげでまた。
_ [EQUIPMENT]JUNYA WATANABE MAN/ドレスシャツ,PARANOID/ラバーコートパンツ

秋冬に向けて長袖と長ズボンを買ってきた。シャツは70年代ぽい襟と色柄がドレスシャツに仕立てられていて変だ。裾が長いからジャケットと着るしかなさそうな事に今気がついた。しかしジュンヤワタナベマンって語感は何度聞いても助けてアルゴマンを連想する。杉浦茂のコロッケ10円の助ぽくもあるな。ズボンは生地の上からゴムが塗布されててすげえ暑そう。店員に洗濯はどうしたらいいですかと聞いたら「基本的に洗濯はしない方がいいです」との由。もう夏は穿けない。あと丈がやたら長い。ブーツカットがストレートに変わる事を厭わず裾上げに望む勇気。_ [とるにたらない]最高裁判所
http://www.mapion.co.jp/c/f?grp=all&uc=1&scl=25000&el=139%2F44%2F48.499&pnf=1&size=500%2C500&nl=35%2F40%2F37.438『タクティクスオウガ』みたいな難攻不落感漂う建物があった。クォータービューで見たら気持ちよさそうだと思ってたら、これ最高裁なのな。あー、日本の司法に楯突く奴等は全員、この高台からアーチャーに射殺されるんだ。裁判官はみんなテンプルナイトか。よく見たらなんか銃眼ぽいディテールもある。かっこいい。
_ 余談
http://d.hatena.ne.jp/matakimika/20041002#1096703611
帰りに新宿を通ったら、タイムズスクエアの下でBloggerのTシャツ着た強面の坊主頭男性がママチャリのサドルにPCのっけてキーを叩いていた。あれはもしかしたら『また君か。』の頁作氏だったのかしら。だとしたら眼福に思う。
_ [立体][感想]大嶋優木/新横浜ありな in 秋葉原
本: おたく:人格=空間=都市 ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展-日本館 出展フィギュア付きカタログ
買ってきた。マスプロダクトのクオリティコントロールと、そのクオリティの実現のために製品のフォーマットまでが規定される企画性。そして大嶋優木の消費のされ方。海洋堂だけじゃなく、オタク界隈に対して結構普遍性を持ったマイルストーンじゃないかと思う。あと、森川嘉一郎のキャラクターデザインを担当したのはリリー・フランキー。あの太い首と焦点の定まらない二重瞼を好んで描くイラストレーターなんてリリー・フランキーくらいしかいない。
2004.10.03
_ [COMIC][感想]マイク・ミニョーラ/ヘルボーイ 破滅の種子
本: ヘルボーイ 破滅の種子ワールドコミックス映画の公開に合わせて重版されたので、買い逃した分を買ってきた。解説でも言われてるけど、ちょっとアメコミの文法に引っ張られている感じがある。シリーズとしてはほぼ最初のエピソードということもあって、ちょっとぎこちなくなっているのかもしれない。モノローグがやたら多かったりとか。蛇神様のモチーフがクトゥルフとアステカごたまぜだったりするのも……これは毎度のことか。ケツアルコアトル繋がりかな。
どちらかといえば、『縛られた棺』や『滅びの右手』の、民話的なテイストのかわいげのある短編のが好きだし、長編としてもこの話の続きにあたる『魔神覚醒』の方が世界の広がりを感じさせてくれて好みではある。十分面白いのだけど、これを最初に読んだらちょっと見くびってしまうかもな、というか。いや、頭に読むべきエピソードを後から読んだために食い足りなく感じてるのかもしれない。忌むべきは自らのエラー訂正能か。
_ [食物][とるにたらない]ブラックカレー 井津野屋
http://www.kagetsu.co.jp/new_bis/index.html高円寺に出来ていた。一度食べると常食せざるをえなくなると思われるのでまだ食べていない。かつて筋肉少女帯は"日本を印度にしてしまえ"と唄ったけれど、樹脂関係のリテラシーまで印度化したのだろうか。
2004.10.10
_ [映画][感想]ヘルボーイ
みてきた。『破滅の種子』をメインプロットに据えながら、他のエピソードやエッセンスもうまく消化されていて好感を持った。屍も背負うし、パンケーキも登場する。1カットだけだけど、ヘルボーイの頭には王冠がある(『小箱いっぱいの邪悪』)し、石像から剣を取るシーケンス(『獣の本性』)も入ってる。シドニー・リーチの能力がサピエンに引き継がれていたりして、オミットされたキャラクターのエッセンスがどこかしら出てくる辺りも目端が利いている。
キャラクター造形は映画向きに大分味付けが濃く、情報量が増えていて、エイブ・サピエンはサイコメトリー能力を与えられたお陰か、ちょっとエキセントリックな影が加えられているし、リズ・シャーマンは大分かわいくなっている(演じるセルマ・ブレアのせいもあるかもしれない)。ヘルボーイは原作のダンディーさが影を潜めて、"ボーイ"の部分が押し出されている感じ。ブルッテンホルムを"父さん"と呼んでべったりで、なにしろリズに恋して自分の容姿を気にして悩むのだ。このキャラ付けの違いは原作を読んだ人にしてみれば大分好き嫌いが分かれそうなところだけれど、原作のヘルボーイの唯一の煩悶の種といえば自分の出自であり、キーとなるエピソード全てに関わる重要な部分でもある。これを一本の映画の中でうまく消化するのは難しかったろうし、悩むというエッセンスを取り出して、より判りやすい悩みにすることで一般性を持たせたのは、うまいと思う。他にもネコ好きだったり炎が効かなかったりといった設定が追加されているのだけど、これも実写なりの情報量を稼ぎ方として有効に機能している。特に、炎に強い伏線の回収の仕方がいい。あ、額の角をまるでヒゲを剃るみたいにグラインダーで削ってるシーンも素敵。敵役はクロエネン教授に尽きる。出てくる度に装面のデザインが違う優遇ぶり。人面マスクはアクロイヤーみたいだ。
BPRDやヘルボーイの存在が、公式には認められてなくて、都市伝説化してるところは基地内の描写も含めてMIBだし、ラグナロク計画の地球ゴマみたいな装置は『コンタクト』だし、ブルッテンホルムがラスプーチンに世界の終末を幻視させられるシーンで流れる曲は『博士の異常な愛情』のラストと同じ曲だしといった風に、オマージュにもセンスを感じるところがあった。
映画としてはちょっとあっさりで、映画化としてはかなり最適解に近いところにうまく着地できた印象。おもしろかった、よりは胸をなでおろしたというか。原作の抑制されたスタイリッシュさは完全にスポイルされているけれど、それはいつかTVアニメシリーズになった時に考えよう。
_ 自転車で映画館
自転車で10分くらいの近所にできたシネコンに見に行ったのだけど、最終回の上映で23:45。真夜中に自転車で近所に映画を見に行くという状況がなんだか新鮮で。カーシアターというか、人気のなさとシネコンという場、それとパーソナルな移動手段であるところの自転車というのが重なって、都内なのに郊外っぽさを感じて面白かった。画像は途中の交差点の信号機の制御盤。電柱についてるあの箱だけど、周囲に誰もいないのに開いていて、ただの箱として認識していた物の中から煌々と光るLEDが非日常。
_ [イベント][感想]国際航空宇宙展2004
http://www.aero-space.jp/天気を気にしながら行ってきた。よかったー。

「環境適合型次世代超音速推進システムの研究開発(ESPR)の技術実証用に作られた1/3スケールのターボファンエンジン。ESPRはいわゆるSSTOみたいなものかと思っていたら、どうやらコンコルドを真面目にリファインするような企画みたいだ。黄色い架台もかっこいい。

ロールス・ロイスのエンジン二つ。左はカットモデル。他にP&WとGEも出展していたけれど、モデルを展示してたのはロールス・ロイスだけ。

左の2枚は五カ国共同で作ったらしいV2500エンジンのファンモジュール。触ってファンをまわすことができた。右はF-4EJに積まれてたGE-17のライセンス物、IHI-17。隣に国産ジェットエンジンのJ-3もあったんだけど、人が多くて写真を撮る気が失せてしまった。ディテールがあっさりしていてそんなにそそられなかったという理由もある。

会場で多分一番人の集まっていた三菱重工ブース。H-IIAロケットの一段目に使われている液体燃料ロケットエンジン、LE-7A。補機のついてないタービンエンジンに比べてこの内臓ぽい密度感。ちょうかっこいい。ビカビカに輝く配管の肉厚そうな感じがイカス。主燃焼室の造型に対する覚える感情は、2stバイクのチャンバー部分に興奮する一部のバイクオタのそれと似ているかもしれない。スカート部分は、見てると軽く眩暈がしてくる。

正面からスカートノズルを見た図。最早グロ画像に見える。

ヘリの実機展示が沢山あって、会場全体で5機くらい見た気がする。民需を期待するならやっぱりヘリコなのかしら。写真はNH90の実物大モデル。内装は多分実機そのままで、自由に中を見る事ができた。

ヘリのコンソール二態。ヘリのジョイスティックって本当にフライトシム用のソレと変わらないように見える。ちなみに、このジョイスティックやトラックボールを専門に扱っている商社のブースもあって、実際に触ってみると剛性感と操作の重たさがPC用とは全然違う。考えたら当たり前だ。

『軍事研究』の広告ぽいシリーズ。TMDに使うPAC-3の実物大模型と、LANTIRNポッドを展示してたロッキード・マーチン。写真はとらなかったけどF-22のモデルも展示してて、やる気マンマンだった。

『軍事研究』の広告ぽいシリーズ2。タレス社の空対地ポッド、ダモクレスとナビフライヤー。
パシフィコ横浜において日本語でプレゼンされているだけで、マジックリアリズムとして成立してしまう言霊だと思った。あと、ダメ押しとしてJane'sのブースも。
- 昼夜間用多機能・多モードターゲティングシステム
- 空対地、空対空及び偵察機能を持つ世界唯一の航空機搭載用ポッド

アクチュエータと、アクチュエータのお化けであるところのランディングギア。惚れるー。

カヤバは航空機用のブレーキまで作っているのだった。人力ではまともにキャリパーが動きそうにない。中央のドラム缶みたいなのはリザーブタンク。あとアウターチューブがCFRPでできてる冗談みたいな直径のサス(正式にはアキュムレータというらしい)なんかも展示されていた。右はなぜかボーイングブースにあったボーイングカラーのZX-10R。ボーイングのブースはこれら全然関係のない機械のほかはへんなイメージフォトばかりで、あまり楽しくない。

カトキぽいというかサイバーコップというか、なんだかキャッチーすぎるデザインの高密度ポリエチレン製対衝撃コンテナ、PROTEX CORE。内部のウレタンスリーブは自由な形に作ってくれるらしい。中央の対衝撃ラックマウントケースがかっこよすぎる。稼動時の状態そのままに輸送が可能です!とか言っていた。右は、東芝の電波発信源視覚化装置。カメラとアレーアンテナを組み合わせて、電波の発信源(携帯とか無線LANとか)をサーモグラフィーぽく表示する。旅客機内での電波発信をいち早く察知したりとかするようだ。
航空宇宙展とはいっても航空宇宙産業が関係する全ての分野から出展されてるわけで、軸受けとか、発条とか、『メタルカラーの時代』がよだれをたらしそうな精密工業の先っぽが集まっている。写真を撮り損ねたけど、3Mのブースとかすごくよかった。ハニカム構造素材を重ねて接着するための専用接着剤とか、萌えすぎる。小さなブースを眺めて歩くだけで、自分の中の産業の裾野に対する想像力がもりもり鍛えられていく感じがして、とても気持ちがよかった。

おみやげに買ってきた宇宙食。エビグラタンと大学いも。 パッケージ日本語だし、なんかただのフリーズドライのような気がするけど、じゃあ本場の宇宙食はただのフリーズドライじゃねえのか問われると、食べたことがないのでわからない。とりあえず、大学いもはいもけんぴみたいな食べ物になっていた。
2004.10.15
_ [マンガ][感想]いましろたかし/釣れんボーイ
本: 釣れんボーイビームコミックス 主人公の、加齢臭すら感じさせる中年描写(アシスタントへの説教や妙なテンションの高さ)と、釣り以外の事物への、まるで大学生みたいなモラトリアムさの違和感がいい。こんなふうに、シャイさをこじらせることなく40絡みまで"ちゃんとしてない大人"であり続けるのって、結構並大抵じゃねえよな、と思う。奥さんがきちんとかわいらしく描かれていて、言外に夫婦仲のよさをにじませていたりとか、印象に残るところ。全体に流れる淡白なトーンに包まれて、読んでいると真夜中でも昼寝がしたくなる。人類最大の敵"めんどくさい"と、うまいこと和平できたマンガなのかな。2004.10.17
_ [本][感想]豊崎由美・大森望/文学賞メッタ斬り!
本: 文学賞メッタ斬り! とりあえず一年は読む小説に困らない強力なブックガイドにして、国内外の文学賞を切り口として、業界への理解の鳥羽口とリテラシーを提供する良質な促成栽培テキスト。二人の著者の心地よい嗜好の偏りは、むしろWWWにあってはスタンダードなものに見える。とりあえず、前から読みたかった佐藤亜紀と町井登志夫を読むことにした。_ とまどう
読んでいる最中、なんだか引っかかりを感じた。それは最近小説ばかり読んでいて、"物語"でないものを単行本で読むスタンスを忘れていたからかもしれないし、元々WEBに掲載されていたものを紙の上で読む事についての違和感、たとえば直射光と反射光、横書き縦書き、紙数に対する気楽さ、URLが氾濫する大量の注解とか、そのうちのどれかかもしれないし、その全てかもしれない。自分の中でうまく言葉にならない。そろそろ届く『和風Wizardry純情派』の新書版を読んでもう一度気にしてみるつもりでいる。
2004.10.20
_ [本][感想]80年代SF傑作選 下
本: 80年代SF傑作選〈下〉ハヤカワ文庫SFグレッグ・ベアの『鏖戦』が読みたかったので、下巻だけ読み返した。こないだ読んだ90年代SF傑作選(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150113947/)よりはこっちのが打率が高いかんじ。ルーディ・ラッカー&マーク・レイドロー『確率パイプライン』は、カオス理論とフラクタル制御を導入したサーフボードで稲村ジェーンを召喚しようとしたら、事象のスケールがおかしくなって、宇宙でシルバーサーファーと邂逅してしまう話。アメリカ西海岸文化とのおっかなびっくりなミクスチャーぶりが楽しい。ジェイムズ・P・ブレイロック『ペーパー・ドラゴン』は、微妙にボタンを掛け違ったアメリカの灰色に湿った描写が気味悪くていい。登場人物もみんな瘴気が頭に障って静かに狂気を湛えている。伊藤潤二ぽい印象。グレッグ・ベア『鏖戦』は、星座の形が変わるほどの長い年月を経て語られる、遥かに変異した人類のクローン戦闘美少女とガス状生命体施禰倶支(セネクシ)のディスコミュニケーションと、それに絡めて描かれる双方の種としての変容についての物語。サイバーパンクの自己パロディかと見紛うばかりの凝った文体。それぞれの種族によって地の文まで変わる。たとえばガス状生命体の時はこんなだ。
一番大きな莢に乗り、液体安母尼亜の薄い層の上を滑走しながら、阿頼厨は新しい任務の事を考えていた。人種なる種族が美杜莎と呼ぶものについては、<施禰倶支>にもそれなりの名称がある。投じた莫大な時間と労力を反映することばがある。彼にとってその原始星団はいくつかの謎を秘めた場所だった。阿頼厨は同胞の四識胞とともに、種子船に乗り組む六胞族中の一胞族を構成し、九十三周も星団のまわりをめぐってきた。軌道を一周するのにかかる時間は――劫外次元内の無時間期間も含めれば――人種の時間にして百三十年ほどにおよぶ。こういう素直な過剰さが心地よくて好き。
2004.10.23
_ [イベント][感想]神田川船の会 特別乗船会
http://homepage2.nifty.com/sn98/kandagawa.htm行ってきた。隅田川で乗船して、神田川と日本橋川を通って再び隅田川に戻ってくる道程。

浅草橋周辺。岸壁は船宿が占めている。水害の影響をまっさきに受ける位置にあるのだから、その普請の安さは納得できるものなのだけど、それでも都心にバラックが林立している光景に驚く。


川面から見る建物はみんな背中を向けている。やる気のない、省みられていない部分が並ぶ光景。未知の視点で都市を覗き見ている。


秋葉原。流通インフラとしての重要度がほとんどない水運で東京を行く。都心の真ん中にいるのに、自分の動きが他者に全く影響を与えない状況は不思議。SPECTATORで他人のプレイするFPSを観戦している感じというか。

御茶ノ水。普段中央線から見下ろす光景の只中にあって、今はその中央線を見上げている。明快で簡潔な非日常。

御茶ノ水-四谷間の緑化ぶりも、水面の高さから見ると更に現実味の薄い景色。暗渠の中にはアルビノワニか。

後楽園近くの東京都清掃局とゴミ運搬船の荷積施設。この辺りで神田川から日本橋川に入っていく。
車もお尻を向けている。誰も何もこの川に対して何の注意も払っていない。油断しきっている。


日本橋川の上は常に高速道路にさえぎられている。真下から仰ぎ見る高速は常に分離合流交差を繰り返していて、さながら首都高に飲み込まれて臓腑の中を移動しているような気分になる。木漏れ日のように差し込む日差しが綺麗だ。


一ツ橋の辺りには江戸時代の石垣が未だに残る。右の画像は東京オリンピックの時に一旦崩して、その後復元したもので、完全に復元できなかったので左側のオリジナルよりも隙間が空いている。

左は高速のランプ。左右に降ろした腕がマクロスに見えたのだけど、多分船酔いのせい。右は日本橋。総御影石製でやたらにゴージャスだ。高架の走り方も美しい。

左は今は使われていない三菱倉庫の建物。正方形の窓の形から、壁の区画の取り方まで、古い建物なりの風格がかっこよかった。画像からは切れてしまったけれど、左側は川のアールに沿って湾曲していて、それもいい。右は高架の曲がりがいかす兜町の証券取引所前。
面白かった。川から望む東京は、ほとんどの人にとって新しい思考や視座を得るきっかけになるんじゃないかと思う。年2回の開催だし定員もあるので、参加するのは結構大変だけど、こんなに興味深い催しを老人会だけに楽しませるのはもったいないとも思う。ので、興味があれば是非。次は来年の5月にやるみたい。
_ [とるにたらない][感想]RICOH/Caplio G4wide
エレクトロニクス: RICOH Caplio G4 Wide ブラック 今回の画像は全部コレで撮ってみた。前から物撮りと風景撮りに使える安いデジカメが欲しくて、広角レンズで気張った絵が撮れて、マクロも得意そうなこの機種はちょっと気にしていて、近所の店で15000円を切っていたので買ってしまった。今のところ、こないだまで人に借りて使っていたソニーの500万画素出始めの頃の物よりいい感じに撮れている。安い外装も、むしろ汚れを気にしないで使い倒せそうで好ましい。ストレージクラスに対応していないのと、電源ボタンがフニャフニャしてるのが気になるところ。2004.10.29
_ [本][感想]林亮介/和風Wizardry純情派

http://d.hatena.ne.jp/WizDiary/現代の京都に、もし狂王の試練場があったらば――。誰かにとっての切実な非現実を、複数の主観視点から描いた物語。
現代社会に突如として挿入された地下迷宮という異物。状況のギャップを受けて、社会はその世界観を揺るがせ、ない。社会は事実を受容し、その影響を(マクロな視点で見れば)迷宮の出入り口の周囲数kmに渡る"迷宮街"と呼ばれる区画に概ね極限している。ただし、本書で描かれるのはそういった大状況ではなくて、ミクロなもの。地下迷宮に惹かれて集って過ごし、往っては還った、あるいは還ることのない人たちの話。灰と青春が隣り合わせの状況に、更に茫漠たる日常が隣り合う。それぞれの現実は、僕、僕ら、誰かにとって、二つともきっと馴染み深いものだ。ただし、この物語では、それらを隔てる障壁は、身分証明書を確認する簡単な検問だけ。この、あの世とこの世のあまりの近さが駆動する奇妙なドラマチックさ。物語内の時間で一日ごとにJavaScriptで全ての登場人物の生死を判定する仕掛け。"20kgの土嚢を担いでトラックを9時間歩き続ける"から始まって、執拗なまでにアスレチックな身体感覚で示されて、注意深くリアリティを伴って飛躍していく強さの描写。微細な描写を積み重ねる事で獲得される、磐石の手触りを伴ういびつな世界観。銃後と前線が隣り合った戦争。敵は化け物、何一つ呵責を覚える事なんてない。"たまには戦争だってしたいんだ、僕たちは!" 自分を含めた、ある種の人間にとっての願望充足小説でもあるんだろう、きっと。
そして、この物語の送り手に対してかなり直接的に対価を支払う機会を得た僥倖に感謝。
_ [マンガ][感想]粟岳高弘/プロキシマ1.3
露出趣味のある女の子が、北野勇作ぽさもあるノスタルジックなプチディストピアで、変な知的生命体と絡むSFエロ短編集。面白かった。全編に流れる枯れた静かな手触りがいい。絵の達者でなさは、ヘタウマとはまた全然違うんだけど、絵力を目的化しすぎていないというか、大人っぽい表現手段としてのこなれ方が感じられて好ましく思われた。こういう絵って、国産PCからCGに入った人に多いような気がするな。MAG、16色、タイリング。3Dでもなく、既存の画材の置換でもないCG。2004.10.30
_ [イベント]自衛隊の大砲を使ったコンサート/チャイコフスキー『大序曲1812年』
http://www.eae.jgsdf.go.jp/ea/event/1812/1812.htmlチャイコフスキーの『大序曲1812年』という曲のオリジナルには、大砲のパートがある。普段太鼓やシンセで代用される事の多いこのパートを、105mm榴弾砲を使用して演奏しよう、という主旨のコンサート。雨足が強かったので中止かな、と思ったけど決行するようなので、行ってきた。寒いし雨で地面がぬかるむし、予定より開演が一時間半くらい遅れるしでくたびれていたのだけれど、儀杖隊のライフルドリル(バトントワリングのバトンを、ライフルに持ち替えたようなもの。一糸乱れぬ動きを正確な時間差で行っててスゴイ)と、榴弾砲の空砲の音響に疲れを忘れる。鼓膜が一瞬キュッと萎縮したあとに全身で音を感じるなんて貴重な体験だ。焼けた空薬莢が雨を浴びて、もうもうと湯気が上がり、その湯気がサーチライトに照らされる光景には、辛い状況で勝手に壮絶な気分になっていたせいもあって、軽く興奮する。面白かった。
2004.10.31
_ [とるにたらない]三洋電機/ECJ-FG10
ここのところ、All Aboutの炊飯器ハックの記事に影響されて、炊飯器で米以外の色々なものを調理している。人は、材料を混ぜてスイッチを入れるだけで、実際の調理には人の手が介在することのできない状況がサイバーだ。熱された鍛造厚釜内の小宇宙において、人の為した業は全て平等に裁かれる。電子レンジとオーブントースターと炊飯器をもって、料理の共産化を推し進めたい。でも、7年間お世話になった炊飯器では、釜のテフロンが剥げてきてケーキが綺麗に作れない。評判のいい三洋製のIH圧力炊飯器にリプレイスした。
チーフ!チーフがきてくれたぞ!!『HALO』の人かと思った。なんか全然白物家電じゃねえな、なんだこれ。総アルミのガワに、9mmパラなら止まりそうな厚さの内釜。G細胞運べそう。かっけー。デザイン家電に背を向ける、スペックに傅くマッシブさ。カテゴリーキラー(誤用)たる使命を帯びた製品故の傾いた雰囲気、炊飯ジャーというドメスティックなデバイスに、明らかに国産家電の文脈とは異なる意匠をまとわせてある落差が萌える。使いこなせていないこともあって、炊飯器としての実力はまだ未知数。麦飯を炊いた感じではそんなに前の機体と差はないようだけれども。


